完全室内飼いの猫なのにお腹に寄生虫が…身近に迫る寄生虫の脅威とは?

鶴野 浩己 鶴野 浩己

 新しい猫を迎える際に、獣医さんから「お腹に寄生虫がいないか検査しましょう」と言われたことはないだろうか。外でネズミや虫を食べていた保護猫ならいざ知らず、完全室内飼いの猫を迎えるなら検査は不要では…?ガンバ犬猫病院(愛媛県四国中央市)で月間平均1200頭の犬猫を診察する鈴木剛院長は「完全室内飼いの猫でも、お腹に虫がいる可能性はありますよ」と話す。

 鈴木先生によると、親猫の母乳や胎盤から感染するケースのほか、ノミを介して感染する寄生虫もいるという。そこで、猫に寄生する代表的な虫と、その特徴を教えてもらった。

瓜実条虫

大きさ:15cm〜50cm
感染経路:ノミ(主にグルーミングにて経口摂取される)
主な症状:あまり症状が出ないケースが多い
発見方法:検便/糞便上で2cm程度の虫が動く/肛門まわりに米粒程度の白いゴミのようなものがたくさん付着する
※完全室内飼いでも寄生される可能性があるのはこの虫。糞便に混ざって排出された虫が動く、または乾燥して白いゴミ状になったものが肛門まわりに付着していることから気付く飼い主が多い。

猫回虫

大きさ:5cm〜10cm
感染経路:親猫の母乳のほか、ネズミなどのげっ歯類、ミミズ、ゴキブリの捕食(土の中に卵がある場合、草などと一緒に土を食べて感染することも)
主な症状:発熱、食欲不振など。ほとんど症状が出ないケースも多いが、子猫や高齢猫など免疫力が低い猫の場合は激しい嘔吐下痢を起こすことも
発見方法:検便/吐しゃ物の中で虫が動く
※屋内で発見したゴキブリを食べる猫は、完全室内飼いでも注意が必要

犬・猫鉤虫

大きさ:1〜2cm
感染経路:親猫の母乳、胎盤のほか、経口・経皮感染も。ネズミの捕食のほか、回虫同様に土から感染するケースも
主な症状:嘔吐、激しい下痢
発見方法:検便

マンソン裂頭条虫

大きさ:1m程度
感染経路:カエル、ヘビ、鳥類の捕食
主な症状:下痢(子猫の場合は激しい下痢の場合も)
<発見方法:検便/肛門からヒモ状で虫が垂れ下がって出てくる(頭部が2つに分かれており、それぞれが腸に喰いついているので引っ張っても抜けない。千切れても、残った頭部からまた成長する)

 ほかにも様々な虫の種類があるが、比較的よく見られるのは上記の虫だそう。治療方法はそれぞれ、内服薬、注射、首筋に垂らすノミ駆除薬などから症状に合わせて獣医師が判断する。ノミ駆除薬はメーカーや種類ごとに、回虫や瓜実条虫、鉤虫を同時に駆除できる商品があるが、マンソン裂頭条虫だけは必要な薬剤量が多いため、内服薬か注射での治療となる。いずれも、効果が表れるまでの期間は1日程度。薬による処置から約2週間後に検便をし、虫の有無を確認するのが一般的な流れだ。

 では、愛猫を寄生虫から守るにはどうすればいいのか?鈴木院長は「僕が圧倒的によく見るのはノミから感染する瓜実条虫。ノミは飼い主が外からもらってきてしまうことが十分にありえますから、完全室内飼いの子でも、寄生虫とノミを同時に駆除できるノミ駆除薬を定期的に使ってあげると安心です」と話す。また、多頭飼いの場合は、一匹に寄生虫が見つかれば、一緒に暮らすすべての猫に治療が必要。猫は、ほかの猫のお尻も舐めるため、同時感染している可能性が高いのだ。もちろん、新しく猫を家族に迎える際には、虫がいないか検便で確認することも大切。家族の一員である猫を守るためにも、ノミ駆除薬の定期使用や、迎える前の検便は、飼い主の責任の一つだと肝に命じたい。

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