タピオカ丼の次に来る「肉骨茶そば」って何!?…富士そばで新展開、「肉吸い」化の可能性も

北村 泰介 北村 泰介

 「肉骨茶」と書いて「バクテー」と読む。マレーシアやシンガポールのスープ料理なのだが、今年8~9月に「タピオカ漬け丼」で話題になった、そば・うどんチェーン店「名代 富士そば」で「肉骨茶(バクテー)そば」として新メニューに導入された。10月後半から一部店舗での先行販売を経て、11月1日から販売店舗を拡大。飲酒の機会が増える年末に向けて「二日酔いが吹っ飛ぶ」を掲げる。東南アジア発、日本の首都圏でイノベーションされた新商品を実際に食べた記者は、あの「浪速の名物」に通じる可能性も感じた。

  見た目のインパクトはタピオカ漬け丼に軍配が上がるものの、そばつゆを一切使っていない、そば店の常識を覆す味のパンチ力では圧勝だった。現地では骨付き豚肉のスープ(茶)だが、富士そば流は豚バラ肉にネギとフライドオニオンのチップが入り、濁りのあるスープに豚のエキスやニンニクが染みる。強烈にコショウの効いたシンガポール式だ(マレーシア式は薬膳入り)。食べると体が火照(ほて)って鼻水と汗が流れ、発汗作用による二日酔い効果を確かに実感した。

 運営するダイタンホールディングスの広報担当は「海外チームがシンガポールで食べていたバクテーを可能な限り現地の味そのままでという形で開発しました。イメージとしてはシンガポールの有名店『ソンファ・バクテー』に寄せたいという思いがあった。力を入れたのはスープ。そばは麺として醤油以外とは合わず、試行錯誤の末に調整幅が見つかったので商品化できました」と経緯を明かす。

 価格は590円。同店では、かけそばが310円で、メニューの多くは400円台。現時点でそばの単品としては最高値となる(いずれも税込)。担当者は「骨付き肉にすると値段がかさんで、うちの限界を超えてしまう。本当はもう少し下げたかったのですが…」というが、ツイッターでは概ね好評。中には「富士そばは好きではないが、この肉骨茶そばはうまかった」という投稿も。そばとは「別物」として捉える層に支持されているようだ。

 「名代 富士そば」は東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で133店を展開(10月末時点)。10月は高円寺と藤沢を皮切りに赤羽、池袋、六本木など9店舗で先行販売され、11月1日から神楽坂、自由が丘、武蔵小山の3店が販売開始。11日から神田、さらに船橋、後楽園などの店舗で同月中に販売予定だ。同社では「まだまだ追加されると思います」という。

 記者は高円寺店で3回食べた。同社スタッフは「高円寺店には1日に約700人が来られますが、肉骨茶そばはその7%。40~50人の間くらいの方が注文しています。この価格でこの数字はバクテーのポテンシャルが国内にあったということ」と分析。同店の高橋一郎店長は「肉係の新商品を出すと他の肉系そばの消費量が減って肉自体の消費は変わらなくなりますが、それがない。バクテー目当てで来られている」と指摘した。

 ネットでは「そば抜きあり?」という声も。高橋店長と広報担当は「ありだと思います」と口をそろえた。二日酔いの時、麺は食べずにスープだけを無性に飲みたくなる時がある。記者は大阪の「肉吸い」を連想した。バラ肉(牛と豚の違いはあるが…)とネギの組み合わせが共通している。

 肉吸いは難波・千日前のうどん店「千とせ」の名物。吉本新喜劇の名優・花紀京さんが「肉うどんのうどん抜き」を二日酔い時に注文したことが発祥とされている。富士そばの広報担当に提案すると、「バクテー肉吸いですか!いいですね(笑)」と興味を示された。

 シンガポールと大阪の食文化の〝異種交配〟から生まれた「肉骨茶肉吸い」なんてハイブリッドな料理を想像した。

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