白血病陽性でシェルターへ来た子猫 難病克服も次はエイズ陽性…それでも幸せな日々

木村 遼 木村 遼

 2019年6月のある日、ボランティアさんから保護の依頼をいただいた。

 「子猫を保護したんだけど血液検査をすると白血病が陽性だったから家で保護ができない」ということで、私ども夫婦が代表を務めているNPO法人動物愛護・福祉協会「60家」のシェルターに1匹の子猫がやってきた。

 ハチワレの可愛い子猫。少し風邪を引いてそうだが元気な男の子だった。この子の兄弟は血液検査の結果、白血病が陰性だったそうだが、残念ながらこの子だけ陽性が出てしまった。

 当時は発症しておらず、白血病キャリアであった。子猫は白血病の場合長生きできない…。陽性から陰転することを願い、免疫治療を始めることにした。

 翌日病院で現状を伝えると、先生から白血病の陰転は「ほぼない」と言われた。しかし絶対ではないし、諦めず治療をすることにした。

 処置をしながら様子を見て、2カ月後に血液検査の再検査をすることに。他に自分たちでできることがあればすべてやってあげたいという思いで、色々と免疫治療法を調べた。病院の処置とは別に、毎日免疫力を高めるサプリメントを2種類飲んでもらうことにした。

 治療を続けてしばらくして風邪も治り、どんどん元気になっていく。このままずっと元気で白血病が治り、健康になってほしいという思いを込め「サンテ」という名前にした。サンテとはフランス語で健康という意味だ。日に日に元気が増してやんちゃ坊主になった。遊び方が激しく、ネズミのオモチャはすぐボロボロになるくらいだ。

 サンテは白血病であるため他の猫たちとは一緒にすることができず、1匹で完全隔離をしていた。新幹線の様に猛ダッシュをする姿を見ると、元気があるのに1匹でいることはかわいそうだという思いが日を増すごとに強くなる。

 「白血病が治ったらみんなと一緒に遊べるよ」と毎日声をかけて白血病の陰転を願った。サンテは頑張って治療を続けてくれた。気づけば2カ月が経ち、いよいよ再検査の日だ。サンテと病院へ行き、ドキドキしながら検査結果を待つ。

 すると先生が首を傾げながら検査キットを持って近づいてきた。

 先生「白血病でしたよね?」

 私「はい…」

 先生「白血病は陰性です。ただエイズが陽性です」

 検査キットを持って説明してくれた。

 白血病が治った!と私は大喜びをした。ただエイズの陽性反応が出てしまった。まだ発症していないため、エイズキャリアになる。エイズは発症せずに寿命を全うできる子も沢山いるため、一安心した。

 サンテは奇跡を起こしたのだ。本当に頑張ってくれた。

 シェルターへ戻り、隔離部屋から同じエイズキャリアで3歳のトムがいる部屋へ引っ越しをした。トムとサンテの面会。はじめは2匹とも警戒していたが、すぐに仲良くなり、まるで兄弟の様に遊んでいる。サンテが喜んでいる姿を見て嬉しく思った。

 しばらくして譲渡会に参加すると、家族に迎えたいと声が掛かった。優しいご家族でお世話をするのは15歳の息子さん。譲渡に向けトライアルが始まった。すぐ環境にも慣れ、例によって1匹で激しく遊んでいるそうだ。家族にもなじみ、無事に本譲渡が決まった。

 いま、サンテは家の中を自由に行き来し、伸び伸びと過ごしている。深夜には大運動会が始まるそうだ。毎日息子さんと一緒に眠ったり、遊んだりと、幸せに日々の生活を楽しんでいる。

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