兵庫県姫路市にある古刹・書写山円教寺で、エサをねだってくるカモが参拝客をなごませているそうです。子どもを連れた母親のカモで、空腹になると住んでいる池を上がり、食べ物を待っているとか。しかし、そこまでするようになったのは、子ガモの成長にまつわる、母ガモならではの悩みが関係しているそうです。
書写山円教寺は平安時代に開かれ、天台宗の修行場として「西の比叡山」とも称されてきました。姫路の中心部から北西にバスで30分ほどの場所にあり、山麓からロープウェーで上がります。豊かな自然の中に重厚な建物が並び、その独自の趣きから、ハリウッド映画「ラスト・サムライ」や大河ドラマ「軍師官兵衛」などのロケ地としても使われてきました。
円教寺の中心的な建物・摩尼殿の入り口近くにある「放生池」に、カモたちは暮らしています。5月中旬ごろに母ガモが現れ、6月上旬には子どもたちが誕生。現在9羽が母ガモと同じくらいの大きさまで育っています。
同池に住む金魚のために、カップに入った「きんぎょのえさ」が販売されていますが、なぜかカモたちも大好物。参拝客が金魚のためにあげようと思うと、一目散に寄ってきてます。いやいや、君たちのためにあげるのではないから…と遠くにエサを放り投げると、みんな一斉にばしゃばしゃばしゃ!水の上を走るかのように追いかけて食べに行きます。その様子はまるでボールを取りに行く犬たちのよう…それともライフセーバーたちのビーチフラッグ競技でこんなの見たことあるような…。
そんな元気いっぱいに育った子ガモたちに押されて、困ったのが母ガモです。我こそはとエサを先取りされてしまい、自分が食べられなくなってしまったのだそう。そこで、空腹になると池を上がり、直接人間にねだりに来るようになったとか。
エサの横に陣取り存在感をアピールしてみたり、訪れた人の服をひっぱっておねだりしてみたり…。もともと人に慣れていたといいますが、お願いする素振りにしては、わりと大胆そう。池の前にある茶店「はづき茶屋」の方が「きんぎょのえさ」の補充などをしていることも分かっていて、店の前で待っていることも日常茶飯事だそうです。
…といいながら、今回円教寺を訪問したのは、梅雨空が一段落して晴れ間がのぞいた休日。参拝客も普段より多く、いつも以上にごはんをもらえてしまったこともあり、お母さんカモはうんともすんとも…まったく池から上がってくれませんでした。はづき茶屋のお店の方と、エサを持って必死に呼びかけたのですが…。
…でも、元気な子ガモたちの様子が楽しかったから…ま、いっか。
ほらほら、エサだよ、ほらいくよ、えいっ!…ばしょばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃばしゃ。こんなに元気いっぱい。子ガモたちが巣立つ日ももうすぐかもしれませんね。