昔はどこの公園にもあった砂場。おままごとをしたり、トンネルや川を作ったり…誰もが経験があるのではないでしょうか。ただ、最近では公園での設置が義務ではなくなった上、衛生上の懸念から「子どもを遊ばせたくない」という人も増えています。そんな中、砂に魅入られ、砂場復権に賭ける女性がいます。「本来の砂遊びの魅力を伝えて、全国に安全できれいな砂場を作れたら」と熱く語る「砂女」の素顔とは-。
京都府の児玉理沙さん(37)。医療法人の広報担当として働くかたわら、ネット上に「砂場とあそびの研究所」を立ち上げ、ボランティアで砂の種類の紹介や、砂場遊びが子どもの成長に与える影響、楽しい遊び方を提案しています。
もともと「砂場ってジメジメして薄暗いところという印象だった」という児玉さん。1児の母になっても「臭いし汚いし、子どもが何を口にするか分からない。絶対に連れて行きたくなかった」。ですが2年前、保育園の新設プロジェクトを担当し、砂場が必要か、設置するならどんな砂がいいかを考えることに。「砂」と言えるのは直径0・0625~2ミリの粒だけということ、砂には採取場所によって「川砂」「海砂」「山砂」「人工砂」があり、特徴が違うこと…。調べるうち「どんどんハマってしまった」と笑います。
鳥取砂丘や中田島砂丘(静岡県浜松市)、九州や北関東など全国各地の砂を取り寄せては、顕微鏡で角の丸さや組成をチェック。何気なく目にしていた淀川で採れた砂が、実は粒子が細かく均等で水はけが良く、角が丸いため目に入ってもケガをしにくいとして、ゴルフ場のバンカーやビーチバレーのコート、競馬場のコースにも使われていると知りました。
一方、公園の砂場はというと、粘土質の土や「砂」と呼べない大きさの石がたくさん混じっていたり、手入れが行き届かず動物のトイレになって汚れていたり。1993年の都市公園法改正で設置義務がなくなり、95年には幼稚園の設置基準からも外れ、作るかどうかは施設側の判断に任されるようになりました。国土交通省の調査では数も微減傾向で「大人が楽しむための砂はすごくこだわっているのに、子どものための公園は、大人も子どもも近寄らない場になっている。とても残念だと思ったんです」。
「砂場って年齢に応じてさまざまな遊び方ができる。創造性だけでなく、年齢が上がればお友達と協調したり、協力して大きなお城を作り上げたり。海外では砂場を見直そうという動きもあるんです。日本でもそうなってほしい」