-なんと。そんな逃げに逃げて、ここまでたどり着くなんて…!でも実に独特です。
「普段生活していて、変な人やもの、変な動きを見たりすると、ついじーっと見てしまうんです。制作もストーリーや目的があるわけではなく、その動きが反復したり静止したり、突然何かに邪魔されて『ブツン』と切れたら…と、自分にとっての『キモチいい動き』を思い浮かべ、どう展開すれば効果的なのか、ストーリーを肉付けしていくイメージです」
-「キモチいい動き」?とは??
「『ぬめっ』とか『ぬるっ』『ばふっ』とかいう動きや、何かと何かがゆっくりとこすれる動き、好きなんですよねぇ。あんまり他人には理解されないですけど(笑)。それをアニメーションでも積極的に取り入れたのが2005年ごろ。すると、作品が本当に『自分のもの』であり『一部』と感じるようになってきた。それが評価して頂けた。幸運です」
-確かに、作品からは「肉感」を感じます。アヌシーでは20年ぶりに日本が「名誉国」に選ばれ、和田さんの2004~19年の短編9本が特集上映されます。
「上映順は単純に作った順です。すみません。技術力に差がありすぎて、年代順でないと僕も観客も見ていてしんどくなるので(笑)。最新作の『ヴィヴァルディ・秋』は、クラシック音楽の『四季』を3人の外国人作家と、それぞれの季節をアニメーションで表現するんですが、『伝えたいこと』って特に無くて(笑)」
-でも色合いとか日本画風ですし…
「いえ、色彩はビビットな色が苦手で鈍い色や淡い色が好きなだけで、特に和を意識しているわけではありません。僕の作品すべて、そんな感じです。見ていてしっくりきたり、ザワザワしたり、ハマったなら存分に笑ったり…。自由に『感じて』もらえたら」
「ただ、今回はAI(人工知能)が音楽に合わせて映像の速度を調整するというこれまでにない演出で、実際どうなるか僕にもわかりません。でも、今回のように映画やテレビだけでなく、ネットやゲーム、音楽など、アニメを使っていろんな表現ができるのでは、と思うんです」
作品と同じように、人柄を捕まえようとしてもするりとすり抜けてしまう、軽いかと思いきや底が見えないほど深い、不思議な魅力を放つ和田さん。フランスに見に行くのはちょっとハードルが高いですが、作品の一部はYouTubeやホームページから見ることもできます。長すぎる10連休で疲れたココロに、和田ワールドはいかがですか?