約400年前に姿を消した豊臣秀吉の大坂城が、最新のVR技術によってよみがえった。NHKの大河ドラマや歴史番組などで培った映像制作の技術を生かした歴史エンターテインメント「NHK VR『サムライの見た夢~幻の豊臣大坂城~』」が大阪歴史博物館(大阪市中央区)でこのほど開幕した。VRゴーグルを装着して実際に空間を歩きながら、天下人・秀吉が築いた豪壮華麗な城を巡り、戦国時代のできごとを見るだけでなく、その場に入り込んで“体験”できる、歴史ファンにはたまらない企画だ。
現在、大阪のシンボルとして知られる大阪城は徳川時代に築かれたもので、秀吉が築いた豊臣大坂城とは異なる。豊臣時代の建物は大坂の陣で焼失、当時の石垣などは現在の大阪城敷地内の地中に眠る。その「幻の城」を、歴史研究の成果とCG、VR技術を組み合わせて再現した。会場の大阪歴史博物館は豊臣大坂城があった場所から目と鼻の先。タイムスリップ気分はさらに盛り上がる。
体験者を待ち受けるのは、そびえ立つ大坂城。空中から見下ろすように城や当時の風景を眺めた後は城内に入り、極楽橋や豪華な座敷、異国の珍獣との遭遇などを臨場感たっぷりに体験する。1614年、大坂冬の陣の砲撃や徳川家康に攻め落とされ、炎上する大坂城など、ドラマチックな場面にも立ち合う。
本展は東京会場に続く巡回だが、所要時間は東京のほぼ倍で、約40分間。秀吉が茶を点てて客人をもてなす「黄金の茶室」や大坂の陣「真田丸」での攻防シーンが追加された。「真田丸」では戦場で体験者も刀を抜き、戦に参加しているような気分を味わえる。人物に実在感があるのも特徴で、城の最上階から大阪平野を眺める秀吉、戦うサムライの姿など思わず感情移入してしまうシーンも。体験を重ねるうち、まるで戦国時代を生きたかのような感覚に陥る。
案内役は「大坂城の化身」で、声を担当するのは声優の早見沙織さん。早見さん自身も収録前にVRを体験し、想像以上の臨場感に思わず声を上げたという。
制作には、NHKが大河ドラマや歴史番組で蓄積してきた城郭や合戦のCGデータのほか、武具を手入れする足軽の動きなど、専門家の監修を受けたモーションデータも活用。テレビで培われた映像表現とVRを組み合わせることで、歴史資料から想像するしかなかった「豊臣大坂城に立つ」という体験を生み出した。
開幕に先立つ内覧会で、NHK IP展開局展開推進部の柴崎壮部長は「さまざまなメンバーが歴史家の検証の下、緻密に作り上げた作品。五感を通じて作品に入るので、より深い記憶として定着しながら、時代をさかのぼる体験ができる」とあいさつ。同デザインセンター映像デザイン部の辻本和晃副部長は、大阪会場作品を制作するにあたり、大阪市立住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)=大阪市北区=に残る、秀吉時代の城の図面を参考にしたことなどを明かし、「考証に基づいた空間の中に身を置き、歴史を考えたもらえたら」と期待を寄せた。同コンテンツ制作局開発グループの国見太郎エグゼクティブ・プロデューサーは「大坂城があった場所は、大阪歴史博物館から歩いてすぐ。こんな身近な環境で開催できてありがたい」と話した。
会期は2027年3月14日(日)まで。入場は日時指定制で事前にオフィシャルサイトでチケット購入が必要。問い合わせはハローダイヤル050-5541-8600。