「えー!無理!無理ですこれ!羽がないと厳しい!」
雨が降りしきる徳島県の山あいで、東京都在住の会社員・はとのひなさん(@yuruhuwadq)が声を上げました。橋を渡るための料金(渡橋料)550円を支払い、ワクワクしながら橋へ近づいた直後のことです。そのひょう変ぶりに、売店の人も思わず笑っていたといいます。 威風堂々とした巨大な吊り橋を前に、一人の旅行客が声を上げました。
訪れたのは、日本三奇橋の一つとして知られる徳島県三好市の「祖谷(いや)のかずら橋」。今年9月、その体験をXに投稿したところ、大きな反響が集まりました。
高い場所は決して苦手ではないという、はとのひなさん。何がそこまで怖かったのか話を伺いました。
「揺れてこわい、イヤ~なかずら橋」参考書の語呂合わせから6年越しの旅
はとのひなさんとこの橋との出会いは、コロナ禍の時期にさかのぼります。
外出や会社の来客が減ったとき、同僚たちがさまざまな勉強を始めたことに刺激を受け、趣味で「旅行業務取扱管理者」という国家資格の勉強を開始しました。旅行会社で旅行のルールを守り、きちんと手配ができる人になるための資格です。 日本全国の観光地を調べる中で、初めてこの橋の存在を知ったといいます。
「参考書に『揺れてこわい、イヤ(祖谷)~なかずら橋』と語呂合わせが書いてあって、なんと安直な……と思いつつ、四国にはこんなスリル満点の橋があるんだなと驚きました。試験に受かったら絶対に行こうと決めていたんです」
その決意から6年。接客業で平日に休みが取れるため、連休にふらっと出かけることが多いそうです。今回も、東京からの一人旅でした。
「死亡率は100%だから」命綱なしで踏み出した水面から14メートル
しかし、温め続けた高揚感は、現地であっけなく吹き飛びます。
目の前に現れたのは、シラクチカズラ(つる植物)などを編み連ねて作られた、長さ約45メートル、幅約2メートル、水面からの高さ約14メートルの吊り橋。足元は踏み板の間隔が広く、隙間から川面が見えます。
「1歩目から真下が見えてクライマックスでした。例えるなら漫画『賭博黙示録カイジ』の鉄骨渡りのような、足元から恐怖がはいあがってくる感覚です。雨でぬれてぎしぎし揺れる橋に、命綱なしで挑むのが信じられませんでした」
鉄骨渡りは、高層ビルの間に渡された鉄骨の上を歩かされる、同作で有名な場面です。
「大丈夫、人間の死亡率は100%だから」と心の中で開き直り、必死に両手でつるをつかみながら前へ進みました。当初は片手で橋をつかみ、もう片方の手で渡る様子を動画撮影するつもりでしたが、序章で撮影は諦めたといいます。
この橋は一方通行のため、渡りきると対岸に出るとのこと。笑っていた売店の人と、その後に顔を合わせることはありませんでした。
「足がすくんで進めなかった」体験者からも次々と
この投稿には、体験者からも「子どもの頃旅行で行って、足がすくんで中々進めなかった」「渡る人みんな片側の綱をしっかりしがみ付いて腰を抜かしたような体勢で進んでおられます」「足がハマる(落ちる)だけのスキマが空いてるから想像してたより数段怖い」など、共感の声が相次ぎました。
反響を見て、はとのひなさんは「こんなに拡散されるなら、覚悟を決めて渡りきるまで撮影すればよかったと後悔しました」と振り返ります。
また、旅の思い出にと購入した、橋のイラストが描かれたクリアファイルをXで紹介すると、「ホントに良い!このクリアファイル!」「かずら橋を渡りたくないけど、このクリアファイル欲しいです!」といった声が寄せられました。
「単純に宝ものを褒められて、うれしい気持ちになりました。とても素敵な絵でしたので、描かれた方に感想と共にこの言葉を届けたいなと思っています」