住宅価格の高騰を受けて、若い世代のあいだで注目を集めているのが「2階建てローン」と呼ばれる新しい住宅ローンです。借入額を2つに分け、一方の元金返済を据え置くことで、月々の負担を大きく抑えられる仕組みだといいます。
32歳のAさんも、この商品に興味を持ったひとりです。都内で9800万円の新築マンションを検討していたところ、不動産会社の担当者から「2階建てローンなら毎月の返済がぐっと楽になりますよ」と勧められました。
月々の負担が減るならとAさんは前向きでしたが、後日SNSで「これって令和のサブプライムローン?」という投稿を見かけて不安になったそうです。では、この2階建てローンを利用した際、据え置いた元金は将来どう返済することになり、本家のサブプライムローンとはどこが違うのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの橋本ひとみさんに話を聞きました。
月々の返済は軽くなっても、据え置いた元金が消えるわけじゃない
ー「2階建てローン」とは、具体的にどのような仕組みですか。月々の返済はどのくらい軽くなるのでしょうか
期日一括返済併用型住宅ローン、いわゆる2階建てローンとは、借入額を1階部分と2階部分に分けて返済を組み立てるハイブリッド型の住宅ローンです。
1階部分は通常のローンと同じく毎月元金と利息をあわせて返済し、2階部分は返済期間中は利息だけを支払い、元金は最終期日に一括で返済する仕組みです。
Aさんの借入額9800万円を例に、変動金利1.0%、35年で返済額を試算してみましょう。また、15年後に住みかえを検討すると仮定し、15年時点での残高も比較します。
通常のローンなら月々約27万7000円ですが、半分ずつ2階建てにすると月々約17万9000円まで下がり、10万円近く軽くなります。ただし15年後の残高は、通常のローンなら約6000万円まで減るのに対し、2階建てローンでは7900万円ほど残ったままです。
ー「令和のサブプライムローン」と呼ばれる理由は何ですか。実際のサブプライムローンとどこが似ていて、どこが違うのでしょうか
似ている点は、将来の住宅価格の上昇を前提にした仕組みだということです。
サブプライムローンも当初は返済額を低く抑え、後から価格上昇分を売却や借り換えで清算する発想で組まれていました。2階建てローンも、据え置いた元金を将来の売却益で完済する出口を前提にしている点が共通しています。
一方、対象となる借り手や資金の扱われ方には違いがあります。
サブプライムローンは信用力の低い人にまで貸し付けを広げ、証券化して世界中の金融機関に転売されていました。
2階建てローンは、対象地域が限られており、さらに年収などの条件もあります。取り扱う金融機関が自らの融資として抱える形になっていることも、サブプライムローンと異なる点です。
ー据え置いた元金は最終的にどう返済することになるのでしょうか。
据え置いた元金は、最終期日に一括で返済しなければなりません。そのため、その時点で物件を売却して代金に充てるか、自己資金などで残額を支払うことになります。
売却をするケースでは、売却代金だけでは完済できない可能性もあります。その場合は、差額を自己資金などでの穴埋めする必要です。
2階建てローンは、月々の返済は軽くなりますが、いずれは物件を売却するか、まとまった資金で完済する必要がある商品です。目先の返済額の軽さだけでなく、そうした条件まで含めて検討する必要があるといえます。
◆橋本ひとみ(はしもと・ひとみ) ファイナンシャルプランナー
銀行勤務12年を経て、現在は会社の経理をおこなう。法人営業や富裕層向け資産運用コンサルティングの経験に加え、ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士の資格を持つ。