映画コメンテーターのLiLiCoが、リサ・ラーソンの孫娘のために一肌脱いだ。
人気陶芸家の孫娘を全力サポート
日本での人気も高い、スウェーデンを代表する陶芸家リサ・ラーソン。9月18日公開の『リサ・ラーソンがいた時間』は、孫娘エミリア・エクマン・ラーソン監督がリサの創作人生を辿りながら最期までを優しく捉えた、極私的かつ普遍的な家族愛のドキュメンタリーだ。
赤と白のしま模様の猫マイキーやハリネズミのハリエット。そんな愛らしいキャラクターを生み出したリサの大ファンであるLiLiCoは、本作の日本での劇場公開実現のために奔走。劇場公開映画では自身初となる日本語字幕の翻訳を担当した。
また本作PRのために来日したエミリア監督を通訳者としてサポートするほか、全国各地でトークイベントを企画・開催する。
同じスウェーデン出身者の強力なサポートを得て、エミリア監督も祖母リサと縁の深い日本での監督作初披露に夢見心地だ。
「日本で私のドキュメンタリーが劇場公開されるなんて…。念願の夢の実現!と思いたいものの、正直まだ自分の中で現実である事を飲み込めていません」と照れ笑いを浮かべながら「日本のメディアから沢山の取材を受ける中で感じたのは、LiLiCoさんによる素晴らしい字幕が皆さんの心にきちんと届いているということ。スウェーデンから遠く離れた国の皆さんが、作品を通して私と同じような気持ちで祖母を感じてくれているのがとてもうれしい」としみじみ喜びをかみしめている。
リスペクトする祖母がくれた言葉
映像作家を夢見たエミリア監督が撮りためた映像素材は、なんと8年分にも及ぶ膨大な量。それらを試行錯誤の末に94分のドキュメンタリーとして凝縮した。
陶芸家として、母として、妻として、そして祖母として。多面的かつナチュラルなリサの姿。孫ならではの絶妙な距離感と視点から生まれた温かみが作品全体を貫いている。
「この映画のお陰で祖母が今も生きている感覚があります。ふと会いたくなった時に私はこの映画や映像素材を観直すし、家族も『こんな風に笑っていた』『あんな癖があった』などと観るたびに盛り上がります。この映画を撮ろうと思わなければ、祖母は私にとっては単なる憧れの存在、深くは知らない人で終わっていたはず。最後の最後にグッと近づくことができた。私にとっては宝物のような作品です」
世界的に著名な陶芸家リサ・ラーソン。しかし孫娘にとっては大切な家族の一員。撮影を重ねる中でエミリア監督は「ここまで赤裸々に撮ったものを世間に晒してよいものなのか?」という葛藤に苛まれたという。だがそんな憂鬱を打ち壊してくれたのは、他でもない被写体となってくれた祖母だった。
「とある場面を撮った時に、その映像を直接本人に見せました。もしかしたら『もう撮らないで!』と怒られるかもしれないと凄く緊張しながら…。すると祖母は私にこう言いました。『あなたは私のことを本当にわかってくれている。うれしいわ』と。そこから祖母は私に若き日のエピソードや芸術への想いを語ってくれるようになりました。祖母にとっての芸術が陶芸であるように、私にとっての芸術が映画であることを理解してくれました」
愛に支えられた新たな芸術
孫に撮られる祖母という構図が、徐々にクリエイター同士の対話になり、最期は祖母を深くリスペクトする孫娘と孫の才能を信じて応援する祖母という慈愛に満ちた関係に着地する。家族だからこその深い繋がりが涙腺を刺激する巧みな構成だ。
「この作品は祖母の協力なしでは生まれなかったものです。寝たきりになった祖母は私を抱きしめながら『あなたが映画監督デビューするのがとても楽しみ』と言ってくれました。それが実現した今、私はこう伝えたいです。『すべておばあちゃんのお陰だからね!』と。私の芸術(本作)が出来上がったのは、祖母が撮影を許可し、私の質問にすべて正直に答えてくれたからです」
偽りない心境を語るエミリア監督の横で、懸命に日本語通訳をするLiLiCoの様子をふと見てみると「うう…」と感極まっている様子。様々な人たちの愛に支えられた幸福な作品だとあらためて実感した。
2024年に92歳で没したリサの生き様から「芸術を仕事にして生きる」という、力強い信念を受け取ったエミリア監督。天国の祖母に向けて「私があなたの事をどれだけ尊敬して愛していたのかを感じ取ってもらいたい。あなたはとても恥ずかしがり屋で引っ込み思案だったけれど、この映画を通してあなたの人生を誇って欲しい」と語り掛けながら、日本の観客へのメッセージもくれた。
「マイキーやハリエットだけではない、芸術家としてのリサ・ラーソンを感じてほしいです。重要なのはアートの背景にある作者の心や物語。値段的価値ではなく、そこに込められた記憶と気持ち。夢や時間、家族、友人、今を生きている事を大切にしようと思ってもらえたら本望です」
リサ・ラーソンを知っている人にも、そうではない人にも。かけがえのない時間を与えてくれる芸術がまたひとつ生まれた。