近年、定年退職後や子どもの独立を機に離婚を考える夫婦が増えているといわれています。特に60歳前後の夫婦に多く見られ、これを一般的に熟年離婚と呼びます。いざ自分の親が離婚を考え始めたと知ると、子どもとしては驚きや戸惑いが大きく、両親が築いてきた家庭が分裂する不安を強く感じやすいものです。このようなとき、まずは客観的な情報を集め、親の気持ちや背景を理解することが重要です。
本記事では、親が熟年離婚しそうなときに子どもが抱える不安やリスク、また離婚を止めるためにできること、なるべく円満に熟年離婚を進める方法などを解説します。
【熟年離婚増加の背景】なぜ今、増えているのか
高齢になってから離婚する夫婦が増えている背景には、社会的変化や夫婦の関係性の変化が大きく影響しています。
社会保障制度の変化や平均寿命の延びに伴い、夫婦が共に過ごす時間が長くなったことが熟年離婚増加の一因といわれています。昔は「我慢して共に人生を送る」ことが普通とされてきましたが、今は「自分らしく生きる」ことを重視する風潮が強くなっています。退職後の自由な時間を新たな人生のスタートと捉える人が増え、結果として離婚という選択をする人が増えています。
もう一つの要因としては、昔に比べてライフスタイルが多様化し、純粋に夫婦関係を見直す機会が多くなったことが挙げられます。
また、従来は女性側が経済的に自立しにくかった時代背景がありましたが、近年は女性の社会進出が進み、一定の収入を得られるケースも増えました。夫に頼らなくても生活が成り立つ状況になると、離婚に踏み切りやすくなることもあります。こうした価値観の変化が、熟年離婚の増加に影響していると考えられます。
熟年離婚を考える親の気持ちとは?
長年連れ添った夫婦だからこそ、突如としてお互いの価値観や生活習慣の違いが鮮明になることがあります。熟年離婚を検討する親の背景にはどのような思いがあるのか見ていきましょう。
・子どもの自立
子どもが自立し、夫婦だけの時間が増えると、それまで育児に追われていた頃には目を向けられなかった問題に気づく瞬間があります。以前は子育てが夫婦の共通目的でしたが、その役割がなくなると互いに向き合う時間が急激に増え、溝が顕在化するのです。こうして「一緒にいる意味」を改めて考えたときに、離婚を選ぶ親もいるのです。
・定年退職により夫婦共に家庭にいる時間が増えた
仕事を退職することで、家庭内で夫婦が共に過ごす時間が増えます。今まで仕事で外に出ていた時間が家庭内にシフトすると、これまで見逃していた相手の行動や考え方に不満を覚えることも多くなるのです。定年後の生活の過ごし方に関して意見が合わない場合、離婚が具体性を帯びることになります。
・家庭内の役割分担や価値観の不一致
日常の家事や支出の管理、趣味の過ごし方などで昔から昔から意識してこなかった価値観の違いが突然浮き彫りになることがあります。一緒に過ごしてきた時間が長い夫婦ほど、相手への遠慮が減る一方で、不満も口にしやすくなるため、これまで隠されていたすれ違いが一気に噴出しがちです。
・自分の親や義両親の介護
介護が必要な状態になると、家族間での負担の分担などが大きな問題として浮上します。どちらの親を中心に介護するのか、費用をどう負担するのかといった現実的な課題に直面することで、夫婦関係に亀裂が入るケースは少なくありません。特に介護をする側のストレスが高まると、それが離婚の引き金になることがあります。
親だけでなく、自分たちの介護を見据えて「こんな相手を介護したくない」という思いがある場合も、体力や気力があるうちに離婚を選ぶ場合もあるでしょう。
・長年のすれ違いや浮気問題の再発
長年一緒に暮らしていると、ふとしたきっかけで不信感や過去の浮気問題が再燃することがあります。若い頃に一度は解決したはずの問題が、熟年期に入るとささいなきっかけから再び気になり始めることも珍しくありません。家族のために長年我慢してきた妻の感情が爆発して、離婚したいという結論に行き着く場合があります。
親が熟年離婚しそうなとき、子どもが感じやすい不安
熟年離婚は、すでに成人している子どもにとっても精神面や経済面を含めた影響が出ることがあります。ここでは、親が熟年離婚しそうな場合に、子どもが感じる不安について解説します。
・両親の板挟みになる精神的負担
母親から父親への愚痴や相談を受ける一方で、父親の心情を心配する状況など、夫婦間のいさかいにより、子どもは大きな精神的負担を感じます。
どちらの親も大切だからこそ、中立な立場を保とうとする気持ちと、寄り添いたい気持ちの間で揺れが生じるためです。両親の板挟み状態が続くと、ストレスが蓄積し子ども自身の精神面にも影響を及ぼす可能性があります。
・離婚後の親の生活への心配
別居や離婚後、両親がそれぞれ一人で生活していけるかという不安は大きな問題です。特に家事を母親に任せきりだった父親の一人暮らしや、母親の経済的自立への心配があります。2人それぞれの老後の生活を想像すると、子どもとしては「大丈夫だろうか」という気持ちが常につきまといます。
・経済的サポートへの不安
熟年離婚では財産分与や年金分割が行われますが、それでも両親の生活費が不足する可能性があります。特に母親の専業主婦期間やパート期間が長く、経済的自立が難しい場合、子どもにサポートを求められるケースも少なくありません。
子ども自身の家族もある中で、親への経済的支援をどこまで行うべきか、その負担への不安は大きなストレス要因となるかもしれません。
・将来の介護問題への懸念
両親が離婚した場合、将来的な介護の問題がより複雑になります。同居していれば両親で互いに支え合えた部分も、別々に暮らすことで子どもの負担が倍増する可能性があります。父親と母親、それぞれの介護が必要になったとき、対応できるのかという不安は深刻なものでしょう。
親同士の関係が悪いと、将来の介護の話し合い自体も困難になる懸念もあります。
・相続、戸籍問題への影響
両親の熟年離婚は、将来の相続や戸籍に関する問題にも影響を与えます。離婚後の財産分与により、相続時の財産構成が変わる可能性があり、子どもにとって予想していた相続内容と異なる状況が生じるかもしれません。
また、両親が別々の戸籍になることで、手続きが複雑化したり、必要な書類の取得に時間がかかるケースもあります。
・家族関係の変化に対する戸惑い
長年続いてきた家族の形が変わることで、今後の関係性にどう対処すべきか戸惑いを感じます。お正月や誕生日などの家族行事をどう過ごすか、孫がいる場合の祖父母との関係をどう維持するかなど、具体的な問題が浮かび上がります。これまで当たり前だった家族のつながりが変化することへの不安は想像以上に大きなものです。