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医学生の「双子ピアニスト」……二刀流を目指すきっかけは、寝たきりの弟 「弟の病気を治したい、同じ境遇の子にも音楽を聴いてほしい」

宮前 晶子 宮前 晶子

「医師を目指す、双子ピアニスト」と、驚きの肩書きを持つ「兄ーズ」。4人きょうだいの長男・次男である山下順一朗さんと宗一郎さんが、連弾ピアニストとしてコンサートなどの音楽活動を行う一方、大学の医学部に在籍しています。

多忙を極めるなかでも、医療的ケアを必要とする子どもとその家族に届けるボランティア演奏を続ける二人。そのきっかけとなったのは、難病を患う9歳下の弟。ひとつの職業だけでも大変なのに、ふたつの道を究めようとする思いを聞きました。

医師を目指したきっかけは弟

「記憶にない頃からピアノは僕たちの生活の一部にありました」と話す兄ーズとピアノの出会いは2歳になるかならないかの頃。

飲み会帰りの父が電子ピアノを勢いで買ってきたことをきっかけに、ピアノを習い始め、保育園年長からコンクールに参加するように。大学受験を控え、高校1年生の時に「コンクール参加はこれで区切りにしよう」と挑んだ大阪国際音楽コンクール連弾部門で優勝し、プロデビューに至りました。

しかし、大学は医学部志望とあって、二人とも「音楽活動一本に専念することはまったく考えていなかった」そうです。

「9歳下の弟は、大田原症候群という難病を患っていて、生まれた時から人工呼吸器、胃ろう、痰の吸引といった医療的ケアを必要としています。24時間、気を張り詰めて弟を見守る両親や定期的に訪れてくれる小児科の医師、看護師さんたちの姿を見ているうちに、僕たちも弟の病気を治したいと思うようになったんです」

そんな中学生のある日、大学受験をどうする?という話になった時、お互いの希望する進路が一致していることを知ったそう。

「僕たちは双子だけど、性格や好みは正反対。でも、進路だけは同じで“そりゃそうだよな”と言い合いました」

高校3年生の夏までコンサート活動を続けながら、現役で合格。異なる大学で医学に向き合う生活も2年目になりました。

「大学に入るまで、学校でも家でもずっと一緒にいる生活だったので、お互いに羽を伸ばしてます」と笑い合う二人。

「医学生になったから、弟を見る目線が変わったということはなくて、弟は僕たちのかわいくて大切な弟。おむつ替えや食事介助などの日常的なケアも今まで通りです。最近は、体が大きくなってきて、成長してるなぁと感じています」(宗一郎さん)

「宗一郎が話すように、僕たちと弟の関係はずっと続いていくものでそこに変化はないのですが、弟によって大学で得た知識の理解が深まるってことがあります。例えば胃ろうの仕組みや、心拍数や脈拍を測るサチュレーションモニター。弟が使っているから、それらに対する見え方には確かに変化がありました」(順一朗さん)

「大学卒業後には医師になる」ため日々精進していますが、将来進む専門科についてはこれから。小児科を有力な選択肢としつつ、「いろいろな科での病院研修を積んで決めていきたい」と考えています。

「コンサートに行けない」……医療的ケア児を取り巻く現状

2024年にプロデビューし、2025年には書籍『夢を奏でる ピアニストと医師の二刀流を目指す双子の物語』を出版。この夏は、1stメジャーアルバム『Circle』のリリース、全国各地のホールでのコンサート活動、そして24時間テレビ出演とさまざまな活動を展開。

「我が家にはテレビがないのですが、24時間テレビのことは知っていました。『私の家族の話』というテーマを聞いて、出演を快諾しました!」と二人。

小学4年生から二人がボランティア演奏を始めたのは、「弟は、僕たちのピアノ演奏を自宅で聴くので音楽が身近なものだけど、同じような境遇の子どもやそのご家族は生で音楽を聴くチャンスが限られているんじゃないかな?」と思ったから。

今回の番組内でピアノを演奏すること、音楽で元気を届けること、医療的ケア児について知ってもらうことは、目指す音楽活動と一致するものでした。

「医療機器って音を出すものもあって、演奏の妨げになると思われている気がします。それに、外出となると医療機器やその他の持ち物もあって大荷物になる。弟に関して言えば、車椅子も持ち上げるのが大変なくらい重いんですよ。外出自体を諦めてしまう人もいると思います」(宗一郎さん)

療育センターや児童発達支援センターなどに赴き、生演奏を届け、入院中や現地に足を運べない人々のためにオンライン配信も実現しました。

「一体感がすごい!」ボランティア演奏

ホールコンサートでもボランティア演奏でも二人が心がけているのは「音楽って楽しい」と感じてもらうことですが、「ボランティア演奏はより一層お客さんとの一体感があります」。

その理由を「ホールのコンサートは舞台上と客席で物理的に距離があるけど、ボランティア演奏は距離感が近い。ピアノの目の前にたくさんの子どもたちがいたりして、ご家族も自由なスタイルで聴いてくれているからかな」と分析。

空間にいる人全員が家族と一緒に家でくつろいでいるかのように、思い思いに音楽を楽しんでくれているのが、兄ーズの二人にもダイレクトに伝わり、演奏も演出もその場が創り出している感覚になるそうです。

「ドラえもんの曲の演奏中には、一番欲しいドラえもんの道具を描いてもらって、演奏後に会場内を歩き、インタビューして回りました。こういう企画は、近い距離だからこそできること。お客さんとコミュニケーションを取って盛り上がりました」(順一朗さん)

「弾いている僕たちと聴いている皆さんで一体感を得られて、僕たち自身も楽しませてもらっています」と声を弾ませ、これからもずっと続けることを決めています。

2026年9月に東京サントリーホールや神戸朝日ホールで合同公演、10月に軽井沢大賀ホール(長野県)、11月に第一生命ホール(東京都)、12月に兵庫県立芸術文化センターでの単独公演がすでに決定しています。

【兄ーズ関連情報】

■Instagram @annies_piano_twins

■YouTube @annies_piano_twins

 

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