キャバクラなどの飲み屋や風俗店などで働くナイトワーカーで、ナンバーワンであり続ける人物と聞けば、とても華やかな生活を送っている印象を抱くでしょう。多くの人々から支持されればキラキラとした生活があっという間に叶い、収入もうなぎのぼり。けれどもキラキラは一生続くわけではなく、いつかはキャストを卒業する時がやってきます。輝きに終止符を打つ人や“打たざるを得なくなった人”……理由はさまざまです。
そんなナイトワーカーのひとりであるケイさん(仮名・35歳)は、7年間ずっとデリヘル店のホームページで顔を出し、ランキング入りを果たし続けていました。ただ彼女は、どうやら“終止符を打たざるを得なくなった人”のようです。
昼職をしながらスナック勤務、当時の月収は200万超え
ケイさんの現在は派遣社員とスナック勤務のWワーク。会社で働きながら月・金・土のみスナックで5時間ほど働く生活を4年続けています。月収は約25万~30万円前後で大型連休は夜職の出勤を増やし、さらに収入をアップさせるのです。
月収30万円は決して低収入のラインではないものの、かつての彼女はひと月に100万円を超える稼ぎがありました。最高月収は約200万円で“全盛期”はこの数字が当たり前だったと言います。
宣材写真にモザイクをかけず、風俗媒体サイトのブログでも顔出しの写メを掲載していました。ケイさんが仕事を始めた13年前は、顔出しキャストの数も多くはなかったため、それだけで差別化が図れたのです(以下『』内、ケイさん談)。
『ハタチの時にお金がほしくてなんとなくデリヘルを始めたんですが、お店の人に“顔出しができるならたくさん予約が入るだろうし、通常バックの+2000円は可能だけど”と交渉され、言われるがままに承諾。案の定バンバン問い合わせが来て、入店初月から超忙しい日々を送りました』
ケイさんは努力により顧客を増やし続け、入店3カ月であっという間にナンバーワンへと駆け上がります。通常バック+2000円に加えて本指名バックも3000円ほど加算され、顧客が来るだけで1接客あたりの給料が相当なものだった様子です。オプションやロングコースのオーダーがあれば1接客で3万円を超え、日給10万円以上も日常茶飯事でした。
ナンバーワンを下りたワケ
7年間のほとんどをナンバーワンとして過ごし、疲れ切った彼女は勢いで店をやめてしまいます。
『8年目に突入したあたりから、徐々に成績が落ち始めましたね。ガクッと下がったわけではないけれど店の集客も悪くなって新規流入が減り、顧客も離れ始めて、おまけに客持ちの強いキャストが他店から移籍してきました。ナンバーワンになれない月が続き、プライド的に自分が許せなかったんですよね。集客にも苦戦したから、勢いで退店しちゃいました。そこからは2年くらいはニート生活です(笑)』
ケイさんは貯めたお金で2年間を無職状態で過ごします。この時に整形や旅行、美容などでほとんどの貯金を使い切ってしまいました。労働を再開せねば生活が危ういと考えた彼女は、心機一転し他店のデリヘルに復帰します。
以前と変わらず顔出しキャストとして再デビューするのですが、昔のようにバンバンと予約が入りません。通常バックに特別料金が加算されることもなく、自分自身にスポットライトが当たらない現実に打ちのめされそうになったとか。
『復帰したときには顔出しキャストなんて大量にいて、私の時代じゃないんだなって思いました。全体の客入りもさらに悪化していたし、かつての指名客に連絡をしても夜遊びを卒業していたり、他にオキニがいたりしてうまくいきません。
顔まで出してブログ頑張ってるのに昔ほど稼げなくてばかばかしくなっちゃいました。それに面接の時に過去の経歴を伝えたところで、2年経っちゃってたらブランクがある扱いで、もう自分の限界を感じましたね』
かつての経験を活かして復帰後にランキング入りを果たしたものの、全体の集客は落ちており、指名本数自体は当時より少なかったそう。月収200万円など夢のまた夢で、限界を覚えたケイさんは勤怠が悪化します。月収30万円に落ち込んだ月さえあり、ナイトワーカー人生に“終止符を打たざるを得ない”状況へと陥りました。
あの頃に戻りたいけど、戻りたくない
勤怠が悪化したあたりから夜職卒業を考え始め、退店後は就職活動に励みます。昼職未経験でしたがなんとか派遣社員となり、風俗に戻らぬよう副業にスナック勤務を選びました。
『一般企業で働き始めたから顔出しでは働けないし、31歳になっていたので受け入れ店舗も多くなかったです。バイトでデリヘルをしようと思ったけれど、1回ムリだと思った世界に戻ることはできませんでした。だからこの年齢で働ける近所のスナックで働き始め、それ以来ずっとWワーカーです』
実はケイさん、デリヘル復帰後もお金を右から左へ流し、当時の貯金はゼロ。ようやくナイトワーカーの最後あたりで金銭感覚が正常に戻りはじめ、いかに昔の自分がお金を遣い過ぎていたかを痛感したのです。
Wワークも経済的に“せざるを得なかった”のですが、現在は昼職生活が続き、少しづつお金を貯めています。月収200万円あれば……と後悔する日はあるものの「あの頃に戻りたいような、戻りたくないような。不思議な気持ちです」と語るのでした。
『売れている頃はお客さんも店もチヤホヤしてくれるし、不自由がなかったですよ。ストレスは大きかったけれど散財で発散して、また仕事頑張ろう!みたいな感じでした。本当に毎日が華やかでしたよ。でも、先が見えないのとナンバーワンのプレッシャーといったらもう……。言葉に表せないほどしんどかったのも事実です。昔が恋しくなる時もたまにありますが、同じ経験をもう1度したいのか?と聞かれると、もういいかなって(笑)』
今年で36歳になるケイさんは、働けるお店が限られても在籍しようと思えばダメな年齢ではありません。でも、敢えて戻らないという選択ができるのは、彼女は頂点の天国と地獄を心の底から知っているからかもしれません。
◆たかなし亜妖(たかなし・あや)
元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。