約100人に1人が発症するといわれる統合失調症。決して珍しい病気ではないものの、一体どういう病気なのか、患者が抱く妄想とはなんなのか知らない人も多いでしょう。漫画家・水谷緑さんの作品『こころのナース夜野さん』の抜粋エピソード『第25話 人間の回復力』では、妄想の正体についての推察が描かれています。
統合失調症でよくある妄想として、「首相と友達だ」などと考える誇大妄想、「自分は盗聴されている」などと思い込む被害妄想、「夫が浮気している」などと勘違いする嫉妬妄想などさまざまなタイプががあります。
しかし、近ごろは発達障害が増え、統合失調症は減っているようです。主人公の精神科ナース・夜野がこの理由を考えていると、先輩看護師は統合失調症の多くは合併症だといわれていると話しました。
先輩看護師の推察では、発達障害などで孤立が深まり統合失調症を発症するのではないかと考えているようです。その話を聞いた夜野は、妄想が生まれる理由についても先輩看護師に尋ねました。
妄想の理由は一説によると、ストレスが溜まり身体が限界を越えて自他の境界が曖昧になることで、自分が感じている恐怖を意味付けする(自分は盗聴されているなど)、つまり自己治癒しようとしている状態だと先輩は話します。
発症した際の『絶対的な恐怖』とは、例えばもし夜野が突然職員たちから「吉川さん」と別の名前で呼ばれ、普段観ないのに「アニメが趣味」と当たり前のように言われたとします。すると「私は誰?みんなは誰なの!?」と焦り、結果として「そうか!みんな宇宙人に操作されてるんだ!」と意味付けへといたるのです。
そうなると身体は常に緊張して感覚がおかしくなり、罵倒されるといった幻聴や味がしないといった味覚障害におちいることもあります。ひどい場合だと、低栄養や脱水といった身体的に危険な状態にもなるそうです。
幻聴や妄想は「説明のつかない状況を説明しようとしている」ということを学んだ夜野。先輩看護師は「幻聴や妄想が現れたら“自己治癒”の力が出てきたってこと」と話します。しかしそこで、自分の幻聴や妄想を否定をされてしまうとさらに孤立を深めてしまい、病状がさらに悪化してしまいます。
多くの統合失調症患者は、発症から数年経ってから来ることが多く、早期発見・早期治療の機会を逃してしまっているといいます。そのうえ服薬の自己中断も多く、その場合はさらに治療が難しくなるのです。大事なのは、患者にとって安心できる環境を整えたうえで、その人の主観にのっとって一緒に対処法を考えることだと先輩看護師は話します。
まず精神科に通うというハードルが高いと考えた夜野は、「占いに行くノリで行けたらいいのに」と考えました。
患者の重い現実を聞くと、どうしても圧倒され、悲しくつらくなっていきます。それでも夜野は、人間は誰しも回復力を持っていると考えます。自分が嫌いなままでも、そのまま少しずつ動いてみれば自分を越えて行けると考えたのでした。
読者からは「疾患について真剣に考える夜野さんが素敵」「勉強になる!」などの声がよせられています。そこで、作者の水谷緑さんに話を聞きました。
病気になるとネガティブな考えにとらわれがちになるが…
―同作において、特に描きたかった部分を教えてください
人間には回復力があるという部分です。病気になるとどうしても不安になりネガティブな考えにとらわれがちですが、本来人間は誰でも自然治癒力があります。
病気の症状は、身体が回復しよう生きようと前を向いている過程ともいえます。絶望せず、希望の方を向いて進む気持ちになってもらえればと思いました。
―同作で、お気に入りのシーンなどはありますか?
上記と同じですが、「人間には回復力がある」と夜野さん自身が気づくところです。つらいときも、希望の方を選んで進む人はいいなと思います。
―夜野さんの今後や、精神科についてもっと知りたくなるような作品でした。同作以外にも、精神科や家族の問題などが描かれているのでしょうか?
『こころのナース夜野さん』には他にも薬物依存や摂食障害、男性の育児うつ、虐待、暴力など、色々な病気の人と対処法が載ってます。
ほかに精神科系の漫画は、『精神科ナースになったわけ』『私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記』『被害者姫 彼女は受動的攻撃をしている』『暴力病院 看護助手が精神科で見たもの』『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』など色々あるので、よければご覧ください。
<水谷緑さん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/mizutanimidori
▽Instagram
https://www.instagram.com/mizutani.midori/
『こころのナース夜野さん』
▽ビッコミ
https://bigcomics.jp/series/118d331d422be
▽単行本第1巻(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4098604760
▽『精神科ナースになったわけ』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4781615287
▽『私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4163916148
▽『被害者姫 彼女は受動的攻撃をしている』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4801943713
▽『暴力病院 看護助手が精神科で見たもの』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4801949037
▽『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4260046772