「その資料、AIで作ったやろ?」
上司から飛んできた、手抜きを疑うような一言。しかし、そこからの新人の思ってもみなかった返しが、職場のAIに対する価値観をガラリと変えることになりました。
Xに投稿したのは、「おいぬさん」さん(@oinu_koinu_13)。「新人のミカタ」としてXで仕事のヒントを発信する、プロジェクトマネージャー歴13年のビジネスパーソンです。職場のリアルなエピソードを聞きました。
「電卓で計算した数字は自分の計算じゃない?」新人の正論に上司が絶句
ことの始まりは、「おいぬさん」さんと同じフロアで働く新人が、上司に資料を確認してもらっていたときのこと。部下の資料を読みこんでいた上司は、ある違和感に気づき「これ、AIで作ったやろ?」と指摘しました。
隣で聞いていた「おいぬさん」さんが張り詰める空気を感じたそのとき、新人はひるむことなく、こう問い返したのです。
「電卓で計算した数字は、自分の計算じゃないことになりますか?」
「Google検索で調べたことは、自分で調べたことにならないんですか?」
この返しに、上司は思わず手を止めて考え込んでしまいました。
新人は少し気まずそうに、さらに続けたそうです。
「むしろAIに丸投げしたら、ちゃんとした資料にはならないんです。どこをAIに任せて、どこは自分で考えるか。それを判断するのが、今の仕事な気がしています」
このやりとりの結末は――
上司はぽつりと、新人に頼みました。
「使い方教えてくれへん?」
このエピソードがXに投稿されると、瞬く間に大きな反響を呼び、これまでに300万回以上も表示されています。
「まさに正論!」「電卓やGoogleが登場した時も、きっと同じように『ズルい』って言われてたんだろうな」「どこを任せて、どこを自分で考えるかが大事」といった、新人の視点に共感するコメントが殺到しました。
一方で、「自分がこれまで積み上げてきた手作りの価値を、ツール一つでひっくり返されるかもしれない不安。上司の気持ちもすごくよく分かる」と、時代の変化に戸惑う世代へ寄り添う声も届き、職場の世代間ギャップや「努力の定義」を巡る議論へと発展しました。
「俺はAIなんか使わへん」反対派のその後
「上司が使い始めたことで、それまでこっそり使っていたメンバーも堂々と使えるようになったのが一番の変化です」と「おいぬさん」さんは振り返ります。
とはいえ、最初から全員がすんなり受け入れたわけではありませんでした。「俺はAIなんか使わん」と抵抗していた中堅メンバーもいたそうです。
ところが、新人にAIの使い方を教わった中堅メンバーは、3週間後には誰よりもプロンプト(指示文)を工夫するほど、すっかりはまってしまったといいます。
「(仕事の)経験がある人がAIを使うと、若手の3倍速で動ける強力な武器になるんです」
アメリカのIT企業が集まるシリコンバレーでの勤務経験もあるという「おいぬさん」さんは、現地のエンジニアが「楽できる方法を探すのが仕事」と捉えていたように、苦しんで作ったものに価値があるという意識を手放すことが、活用の第一歩だといいます。そのうえで、AIを「使える人」と「使えない人」には、はっきりとした差があると指摘します。
「使えない人はAIに任せっきりで、(中身の)薄い資料を量産しがちですが、使える人は『ここは自分の判断、ここはAI』と線引きができています」
電卓やGoogle検索がいつの間にか当たり前の道具になったように、AIもまた同じ道をたどっていくかもしれません。