モンゴルの伝統的住居として知られるゲル。
今、SNS上ではそんなゲルの組み立てる順序が大きな注目を集めている。
「モンゴルの移動式住居ゲルの作り方その1 気に入った場所にドアを置く」
と、その模様を紹介したのは写真家でライターの阪口克(さかぐち・かつみ)さん(@katumi_sakaguti)。
草原の中にぽつんと置かれたドア…まるでドラえもんの「どこでもドア」のような光景だが、現地ではゲルを設置する際、このようにまずドアを置いてから外壁の骨格、大黒柱、ドームの頂点、屋根…という順序で組み立てていくそうだ。
阪口さんにお話を聞いた。
ーーゲルの設置風景を撮影された経緯は?
阪口:私は世界各地の一般家庭に居候取材し、各国の日々の暮らしや食文化、街の様子などを撮影することをライフワークにしております。その取材の一つとして、モンゴルの遊牧民のご家庭に居候取材した時に、ゲルの新築に立ち会うことができました。
ーードアから先に設置すると知った際のご感想を。
阪口:ゲルの材料一式を街で調達したご家族が、大草原にバーンとドアを置いた時は「おお!」と感動したものです。多くの人が思ったのと同じく「どこでもドアだ〜!」って感じましたし、そのイメージで撮影しました。
ただアウトドア分野の取材も多いカメラマンとしては、家の出入り口にあたるドアを最初に設置するのは合理的だなとも感じました。
ーーゲルはどれくらいの時間で完成しましたか?
阪口:家族親族のお手伝いの人々が10人ほど集まり、2時間ほどで完成しました。今回は新築だったので、部材の調整などもあったようですが、普段から使っているゲルの移動ならもっと早くできるそうです。全体的にシステマチックにできていて、さすがチンギスハーンの昔から使われている家だなと思いました。
ーーご投稿に対し大きな反響がありました。
阪口:大草原にドアが立つという絵の強さと同時に、土地に縛られず、気に入った場所に暮らしの場を設けるというメッセージに、多くの人が感動してくれたのだと思います。実際には遊牧民の方々も、行政やご近所、天候など様々なしがらみのなかで建てる場所を選んでおられますが(笑)。
◇ ◇
SNSユーザーたちから
「どこまでも続く何もない草原にドアを置くところから始まるのが何というかこう… 美しいですね」
「藤子・F・不二雄先生はこんな写真を見て、『どこでもドア』を思いついたのではないか。 もちろんそんなことはないのでしょうが、この写真を見るとついそんなことを想像しますね。 それくらい色々と掻き立ててくれる写真だなと」
「家をすべてフェルトで覆って断熱するところがさすが遊牧民。ものすごく寒いところでの移動しながらの生活だから、考え尽くされ、無駄が全て削ぎ落とされていると感じます」
など数々の驚きの声が寄せられた今回の投稿。読者のみなさんはゲルの設置風景を見てどんなことを感じただろうか?
なお阪口さんは3月に毎日小学生新聞の人気連載『おうちで作ろう世界のごはん』を書籍化した『世界のまいにちごはんいただきます!』(さ・え・ら書房)を上梓。世界中を回っている阪口さんならではの、写真旅行記と再現レシピが組み合わさったユニークかつ豊かな内容なので、ご興味のある方はぜひ手に取っていただきたい。
阪口克さんプロフィール
カメラマン・ライター。自転車でオーストラリア大陸1万2千キロを一周する旅を達成。その後、旅行雑誌やアウトドア雑誌の撮影の仕事をしながら、海外の農村や漁村の人たちの家に泊めてもらい、いっしょにごはんを食べる取材を続けている。訪れた国は40か国以上。DIY(ものづくり)が大好きで、現在の埼玉県秩父の自宅も自分で建てたもの。
『世界のともだち』(偕成社)で、オーストラリア担当のカメラマンとして、第64回産経児童出版文化賞大賞を共同受賞。主な著書に『焚き火のすべて』(草思社)、『家をセルフでビルドしたい』(文藝春秋)、『冒険食堂』(山と渓谷社)などがある。
Xアカウント:https://x.com/katumi_sakaguti
「世界のまいにちごはんいただきます!」(さ・え・ら書房):https://sakaguti.org/archives/270