「アトピーは少しかゆいだけ」と思っている人も少なくないかもしれません。しかし、その症状に長年苦しみ、日常生活に大きな支障を抱える人もいます。ユイザキカズヤさんがX(旧Twitter)に投稿した漫画『最重度のアトピーだった私が、人権を金で買った話』では、自身が経験した壮絶な闘病生活や、周囲に理解されない苦しみが描かれ、大きな反響を集めました。
物語は、薄暗い病室のベッドに横たわる、影のように描かれた作者の姿から始まります。作者は重度のアトピー性皮膚炎により、中学生の頃に入院した経験がありました。
比較的調子がいいときですら、24時間続くかゆみと搔き壊した皮膚の痛みが常に付きまとい、毎日の入浴は地獄の苦しみでした。また、症状の影響で作者はこれまで自由に服を選べたこともありません。
それだけではなく、かゆみや痛みによって夜も十分に眠れず、睡眠不足にも悩まされていました。そのため作者は、外出や運動も制限され、思うような青春を送れないまま高校を中退することになります。
アトピーに苦しむ作者を見て、作者の母は藁にもすがる思いでさまざまな民間療法や治療法を試します。しかし作者の症状は改善することはありません。しかも周囲からは「アトピーはかゆいだけ」「死ぬことはない」と軽く見られ、見た目による偏見や心ない視線にさらされるなど、病気のつらさを理解されない苦しみも経験しました。
そんなある日、作者はアシスタントからアトピー性皮膚炎の新薬の治療をすすめられます。最初は半信半疑でしたが、アシスタントが作者のために多くの情報を調べてくれていたこと、その情報によると海外で先行処方された日本人の経過が良好だったことから、専門医の元で新薬『デュピクセント』での治療を受ける決意をします。
実際に試してみると、注射後すぐに症状は大きく改善され、作者は驚きを隠せませんでした。以前は苦しみが伴っていた、入浴後の自由時間や布団で眠るといった行動が、これによって苦痛なく過ごせるようになったのです。
そのため、作者は月に2回高額な薬を使用し続けることを選びました。高額療養費制度に助けられているものの、その出費はかなりの金額とのこと。そのため作者は、「私は人権をカネで買ったんだ」と語るのでした。
一方で、「アトピーを完治する方法はまだない」とも明言する作者は、最後にアトピーで苦しむ子どもの保護者に向けてのメッセージを描きます。それは、幼い頃からアトピーと戦い続け、さまざまな民間療法も試した末に作者が辿り着いた結論「医者に言われた通りに薬を使え!」「医者に言われた通りに皮膚をいたわれ!」というシンプルながら強い言葉でした。
読者からは「私も重度でした。読んでて昔思い出して心痛かったけど、デュピクセントに辿り着いていて良かったと思いました。」「新薬開発者の皆様には本当に感謝しかありません」など、アトピー経験者からの声が多くあがっています。そんな同作について、作者のユイザキカズヤさんに話を聞きました。
世の中につらくない病気なんてない
ー同作を描こうと思ったきっかけを教えてください。
SNSで色々な病気のエッセイ漫画が流れてくる中、「アトピーのエッセイ漫画って見たことないな?」と思ったのがきっかけです。
ー作中で描かれていた「アトピー性皮膚炎が軽く見られてしまう現状」について詳しく教えてください。
「痒いだけ」「肌の見た目が悪くなる」と言う点で、なかなか理解が得られない病気だと感じています。自身の経験がない病気の辛さが分からないのは仕方ないですが、軽くみるのはやめてほしいなと思ってます。世の中につらくない病気なんてありませんから。
ー注射治療後の生活の変化が印象的ですが、今も同様に効果的ですか?
はい。とても助かっています。動く時やお風呂に入る時に痛みがないのがすごく嬉しかったです。また、アトピーは汗をかいたり体温が高くなると痒くなるのですが、今では運動も出来るようになりました。
ー作品公開後、SNSではどのような反響がありましたか?
アトピーの当事者の方、家族がアトピーの方、医療従事者の方から賛同と共感の声を頂いてます。特にアトピー当事者の方の「読んでて過去の自分を思い出して泣いた」というのが印象に残ってます。やはりみなさん苦労しているんだなと思いました。
<ユイザキカズヤさん関連情報>
▽電子書籍『最重度のアトピーだった私が人権を金で買った話。 ユイザキの闘病エッセイ』(Amazon)
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▽書籍『おんなのこのまゆ 昭和式メイド閑話抄 (1)』(Amazon)
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