地域によって食文化が異なることがありますが、その中に「食用菊」というものがあります。お刺身に添えられている飾り菊とは別物で、花びらそのものを調理して食べる文化があるのです。主に東北や新潟県で親しまれ、スーパーでは黄色や紫色の美しい大輪の菊の花がパックに詰められて販売されています。
そんな食用菊を初めて口にした漫画家・赤夏さんが、素直な驚きと感動を描いた漫画『菊の花を食べる』がSNSで話題です。
物語は、北海道から旅行に来た友人と京都で落ち合った作者が、デパ地下で偶然「食用菊」を見つけたところから始まります。「綺麗だね」と眺めていた作者に友人が「食べる?」と問いかけた瞬間、作者は思わず「えっ...?菊を…食べる?」と混乱します。
頭に浮かぶのは、お刺身に添えられる装飾用の小さな菊のみです。しかし秋田出身の友人は当たり前のように「料理しようか?秋田では菊を食べるよ」と笑顔で提案しました。
初めての体験に胸が高鳴る作者は「菊を食べるなんて、美しく幻想的でおとぎ話のよう」と興奮気味。帰宅後、さっそくパックを開けると、黄金色の花からふわっと優しい香りが広がります。
「大輪の立派な花だ…」と、作者が菊の美しさに見惚れる一方で、友人は容赦なく花びらをブチブチとちぎっていきます。ボウル一杯の花びらになったところで、さっと湯通し、流水で冷やして水気を切れば、菊のおひたしの完成です。
友人の「しょうゆを少しつけると美味しいよ」というアドバイスに従って口に運ぶと、「シャミ」という独特の食感です。果物と野菜の間のような不思議な食感とさわやかな味わいに思わず笑顔がこぼれます。
作者は「友達のふるさとの、美しい懐かしい食べ物を友達に料理してもらって一緒に食べる」「なんて素晴らしいことだろう」と感動します。そんな何よりも贅沢で温かな体験とともに、忘れられない夜となったのでした。
読者からは「学校給食でよく出ました!」「久々に食べたくなりました。思い出させてくれてありがとうございます」「うちの方ではなめこと大根おろしで食べていました!」といった東北出身者の読者の声が多く寄せられました。
そんな同作について、作者の赤夏さんに話を聞きました。
懐かしい記憶を呼び起こすきっかけになれたようでうれしかった
― 菊はさまざまな食べ方があるようですが、赤夏さんご自身が「今後試してみたい」と思う食べ方はありますか?
さっくり仕上がりそうなので天ぷらが気になります。好き嫌いはない方なので、他にも菊の花の美しい色や形を活かした調理方法や、地元のかたおすすめの料理をお聞きして色々食べてみたく思います。
― 東北出身の読者を中心に、食べ方に関する反応が多く寄せられていました。赤夏さんが特に印象に残ったコメントがあれば教えてください。
お祖母さんやお母さんの思い出を語って下さる方が多くて、懐かしい記憶を呼び起こすきっかけになれたようでうれしかったです。また、自分と同じように初めて知ったという方のコメントも多く拝見し、食文化を知るきっかけになれて幸いでした。
― 読者へメッセージをお願いします。
ささやかで個人的な思い出を描いたものですが、自分にとってうれしかった出来事を読んで楽しんでいただけて、とてもありがたいです。
<赤夏さん関連情報>
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