ひぐまや、つきのわぐまが、具に!? 「100%富山県産コシヒカリのおいしいお米とおいしい水」で作った「おにぎり」を紹介した、コンビニのXアカウントでの投稿に、「食べくらべをしたい」などの反応が多く寄せられています。いったい、どんな味なのか、はたして人気なのか知りたいですよね……?
販売元の「立山サンダーバード」(富山県中新川郡立山町)に、詳しく聞きました。
立山黒部アルペンルートへと続く県道6号線沿いにあり、登山など山でのレジャーを楽しむ人が多く立ち寄るローカルなコンビニである同店。「ひぐま 950円」「あなぐま 950円」「つきのわぐま 700円」の説明を読むと、「北海道にだけいるひぐま 醤油味!」「本州に生息する熊肉のねぎ醤油味!」などジビエ感あふれる記載。
投稿には、「ジビエおにぎり 全部買って食べ比べてみたい」「ヒグマとツキノワグマの違いってあるの?」などの反応が。それとともに、ヒグマとツキノワグマの市街地への出没や人・農作物への被害が報じられることが多い今、「今一番話題の食材ですねー」「タイムリーすぎる」との声もありました。
クマのジビエおにぎりについて、お店を経営する伊藤敬吾さん(以下、伊藤さん)に聞きました。
「ひぐま」VS「つきのわぐま」、おにぎり対決の結果は!?
「ひぐまの肉はより普通の肉に近い。クマ自体クセのない味だけど、ひぐまの味とつきのわぐまの味は別って感じですね。ひぐまの方が食べ慣れた肉の味、牛肉のような食べやすい味でおいしかったですわね。仕入れた時に塩焼きにして食べてみたんだけど、つきのわぐまよりくさみがない」という伊藤さん。
ちなみに、おすすめは「ひぐま」で、お店のスタッフからも「『ひぐま』のほうが美味しい。食べやすい」と好評。お客さんから「どっちがおいしい」と聞かれたときも、そう答えているそう。
「ひぐま」と「つきのわぐま」であれば、どちらがよく売れているのか聞くと……「つきのわぐま」とのこと。
「値段が値段だから。つきのわぐまは200円くらい安い。『ちょっとクマを食べてみたい』という人は安い方を買っていかれますね」
確かに「タイムリー」だけど……
今年の秋はクマが人の生活エリアに現れるなどの報道が多数あり、その存在が注目されていますが、おにぎりの売れ行きへの影響を聞くと、「お店がある場所が山の方なんで、クマの影響でお客さんが少なくなっている」と言います。
コンビニのある立山町はもともと「いつもクマが出るところ」で、10月24日住宅の庭で女性がクマに襲われ負傷、11月7日には立山町総合公園でクマが目撃され緊急銃猟が実施されたなど、クマ関連の事件がたびたび起こっているため、外出を控える人も少なくないのでしょう。
「テレビなど、いろんなところで紹介してもらったりして、クマのおにぎりを目当てに来るお客さんもおられますね。SNSで公開してから『ひぐま』『つきのわぐま』『あなぐま』の3つ同時に買ってかれたりとか、クマ系が売れるようになってきたりとか、それはありますわね」
メディアの紹介やSNSでの投稿がきっかけで購入する人は少なくないものの、お客さんの減少を上回る売り上げではないそうです。
東京の知人が「ジビエが流行っている」の声で
さて、「立山サンダーバード」では、ほかにもジビエのおにぎりは多数販売しており、「ダチョウ」のおにぎりも!
「ジビエのおにぎりを販売し始めたのは7、8年ほど前。知人が東京にいて『東京でジビエが流行っている』と聞いたのがきっかけです。お客さんで猟師の人がいて、ジビエについていろいろ教えてもらえたので、販売していくことにしました」
そんな変わり種のおにぎりは、販売当初から「珍しいから買ってかれてました」。その結果、「いのしし」「しか」から始まり、「ひつじ」「かも」「さめ」「うさぎ」「カンガルー」「わに」、そして「ひぐま」「あなぐま」「つきのわぐま」と、どんどん種類が増えていったそうです。
「お店にはおでんサンドイッチなど変わったサンドイッチを作って作っていたので、ジビエのおにぎりをドーンと出しても違和感はなかったんじゃないかと思います」
もともと個性的な商品を売るお店なので、お客さんも珍しい商品を歓迎する人が多かったのかもしれませんね。
今年、人気のジビエおにぎりは先ほど挙げた「つきのわぐま」。次いで「カンガルー」「うさぎ」「いのしし」「しか」の順に好まれているそうです。
「素材そのままの味を知ってもらいたい」
気になる調理方法ですが、ジビエは肉で仕入れ、おにぎりの具としてお店で調理。味付けはシンプルにするよう心掛けているそうです。
「イノシシとか、シカとか、お肉の味がそれぞれわかるように、味付けは基本的に砂糖、酒、みりん、醤油で統一してあるんですわ。何か1つ焼肉のたれとかにして、味をかっこよくしたりはしない。素材そのままの味を知ってもらいたい」
ジビエというと、肉のにおいが気になる人もいますが、薬味を多く入れたり、猟師さんから教えてもらって、においを抑える効果のある薬味で対応。「ショウガを入れたり、ニンニク入れたりとか。それくらいの差ですね」と言います。
ちなみに、定番のさけ・たらこ、サケマヨネーズ、たらこマヨネーズ、地元でよく食べられる、とろろ昆布を巻いた梅干しおにぎり、地元食材ではホタルイカやブリもあるとのことです。
最後にジビエも含め、さまざまなおにぎりを販売しているお店としてメッセージをお願いしました。
「ジビエに限らずですけど、いろんな食べたことがない味をおにぎりにして販売してるんで、せっかく生きているのであればそういう変わった食べ物にも挑戦を。
お店で見てわーわーわーっていって騒ぐ人もいるけど、本当にどうもこうも食べられないというものはないので、苦手意識がある人もこれを機に食べて見てもらえたら」
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スーパーやコンビニではなかなか見かけないジビエですが、コンビニでおにぎりという形で買えるのなら気軽にチャレンジできそうです。また、なじみのない食材や見慣れない食べ物でも、素材そのものの味を大切に調理する人、そして好んで食べる人もいることを理解した上でリアクションをしたいですね。
「うちの店は変わったおにぎりなどありますけど、サンドイッチやよそにないものを扱っていたりするので、ぜひ、機会があればご来店ください」と伊藤さん。店頭のほか、オンラインショップでも、さまざまな雑貨や食品を購入できます。
■「立山サンダーバート」のXアカウント(@thunderbird3810) https://x.com/thunderbird3810
■「立山サンダーバード」Facebookアカウント https://www.facebook.com/thunderbird3810/
■「立山サンダーバード」Instagramアカウント(tateyama.thunderbird) https://www.instagram.com/tateyama.thunderbird
■「立山サンダーバード」オンラインショップ https://t-thunderbird.com/