今年、創業150周年を迎えるホテルがある。岡山市中心部に立地するホテルマイラ(同市北区錦町)。かつて港町として栄えた三蟠港(同市中区江並)にあった旅館が前身で、明治天皇や伊藤博文が立ち寄った逸話も残る老舗だ。その歴史を掘り起こすため、従業員が動画を制作し、YouTubeで公開している。
前身となる山長旅館は1875(明治8)年、海の玄関口だった三蟠港で創業。多くの旅行客を迎え、85(同18)年には岡山を行幸した明治天皇と伊藤博文が休憩に立ち寄ったとされる。91(同24)年の岡山駅開業を受けて同駅前に旅館を出店するなど多い時には4店を運営。1987年に現在地でビジネスホテルに業態転換した。
動画づくりは、ホテルの歴史について社内でも断片的にしか共有されていないため、広く知ってもらおうと従業員3人が計画。仕事の合間に資料を探したり、ゆかりの地を訪ねたりしながら、撮影やナレーション、出演、編集作業をこなし、時代ごとに3本の動画を制作した。
創業当時を振り返る第1章では、明治天皇らの一行が旅館を訪れたことを記す石碑を紹介。同市立中央図書館(同市北区二日市町)に今も残る、一行を迎えた際のちょうちんなども取り上げた。
第2章では、2代目の小林嘉四郎と妻つるのが二人三脚で経営に励んだエピソードをドラマ仕立てで再現。来客を増やすため、岡山駅前の旅館で三蟠港の新鮮な魚料理を提供したり、四国遍路の巡礼者を無料で泊めたりしたことを説明する。第3章は岡山空襲からの復興や、現在のホテル名に変えた経緯などを示している。
同ホテルは「歴史を調べてみたら、私たちも初めて知る事実が多くあった。動画を通じて、歴史の深さや今に通じるサービス精神、温かさを感じてもらいたい」としている。
動画はマイラッコちゃんねる(https://www.youtube.com/@hotel_maira)から。