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42歳男性「ずっとCAになりたかった」…海外で“夢”を実現し話題に 就職して1年半後の今は?

宮前 晶子 宮前 晶子

「もうすぐ43歳のおじさんですが、未経験からの挑戦で、20年越しの夢だった客室乗務員(CA)になれることになりました。まだ信じられない気持ちです」

カナダに暮らす日本人男性、空飛ぶおりょうさん(@risetogether_ca 以下おりょうさん)が喜びの声をポストしたのは2024年2月。当時この投稿は大きな反響となり、約13万いいね!を獲得しました。

それから、約1年半。新人CAとして世界の空を駆け巡るおりょうさんに、取材しました。

憧れていたけど、夢を封印していた

「年齢なんてただの数字! 後悔しないで突き進む姿カッコいい」
「夢は叶うって教えてくれてありがとう」
「新しいことを始めるのに必要なのは若さではなく熱意だ」

このように多くの人に勇気を与えた投稿主のおりょうさんは、岡山県の郊外出身。夢を叶えるまでには、紆余曲折の20年がありました。

大学時代は、CAをめざす友人が多い環境で「フライトアテンダントになれたら」と漠然と夢を描いたことはありましたが、男性の客室乗務員の採用枠は少なく、ホテルに就職。

外国人観光客が多い職場では、英語力を鍛えられ、海外で働きたい気持ちが強まり、カナダへ移住。現地でフランス語を学びながら、日本語教師やゲーム翻訳など、さまざまな職を経験しました。

「実は2016年のカナダ永住権を取得するタイミングで、CAになろうか、と検討しました。しかし、その時は履歴書の作成や求人への応募といった行動を起こすことはしませんでした」

“CAになるという夢はもう追わないもの”と自然に線を引き、永住後はカナダへの旅行者や移民のビザ申請をサポートするコンサルティング業でのキャリア構築に邁進しました。

「実際には何年もの間まったく意識することすらなかった時期もありました。今思えば、心の奥にしまい込んで、忘れていたのかもしれません」

ところが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行がおりょうさんの行く手を阻みます。旅行者や移住を希望する人が激減し、売り上げゼロとなり、廃業を決断。

職業訓練校でITサポートスキルを学び、モントリオールで就職活動。しかし、順調にはことが運びません。応募しても何の返答もない日々が続きました。

「行き詰まりを感じていたとき、10年ほど付き合いのある友人が“CAになりたいという夢、今チャレンジしたら?”と言ってきたのです。“あなたに向いている職業だと思う”と軽く背中を押してくれました」

おりょうさん自身、これまでの接客経験や語学力、そして昔から「若いのに落ち着いているね」と言われるような自身の性格を鑑みると、フライトアテンダントとして求められる人物像にうまく合うかもしれないと思ったそう。

学生時代の夢が甦り、「自分にはもう失うものもないし、ダメもとで挑戦してみよう」と一念発起。翌日にはさっそく、CAを募集する航空会社にWEB応募をしていました。

42歳での挑戦は、前向きな気分で

「私のような年齢層が思い切ってキャリアチェンジをすることは、カナダでは決して珍しいことではありません。そうした例も身近にあったため、年齢についてはまったく気になりませんでした。面接の練習になるし、方向転換のきっかけになるかもしれない…勝算について深く考えていたわけではありません」。

とはいえ、若い頃に描いていた夢が現実になるかもしれない、という事態に心が躍るような感覚になったことも確か。

「もう一度チャレンジできるかもしれない、という気持ちは、意外なほど前向きな気分になりました」

電話での英語、フランス語、日本語の語学力口頭試験や、リクルーターとのオンライン面接を経て、本社で対面面接。おりょうさんは、「あくまでも私目線の見解」と前置きした上で、対面面接ではそれまでの面接や試験では判断しきれない“所作”や“人柄”が見られていたのではないかと語ります。

「求人広告には書かれていないような細かな点――たとえば、人前での振る舞い、落ち着き、清潔感や自然な笑顔、周囲との距離感――そういった部分が重視されていたのではないかと思います。本社での面接に臨むに当たり、私はすべての瞬間が評価対象になるつもりで、言動や態度には最大限注意を払いました」

また、グループでのディスカッションでは、「“積極性”や“チームワーク”は、言葉でアピールするものではなく、自然な行動の中でこそ伝わると思っていたので、自分らしい形でそこを意識しました」

応募から1ヶ月後には雇用オファーを受けるという、まさにトントン拍子の展開でした。

 CAを続ける上で、大事だと感じたのは…

採用後には脱落者も出るほど厳しいジョブトレーニングもありましたが、それも乗り越え、2カ月後には本採用。

42歳からの新天地で約1年余りの乗務を経験し、“準備”と“慣れ”が重要だという考えに至りました。

体力や気力について年齢による大きな差はあまり感じていないそうで、乗務する機会の多い日本路線にはシニアクルーも多く、「まだまだ若いね」と声をかけられることも。ただ、幼少期から英語やフランス語のバイリンガル環境で育ったクルーが操る言語力には敵わないと感じることがあるそうです。

「その分、あらかじめ多言語のアナウンス台本を用意したり、必要に応じて翻訳ツールを活用したりと、事前の準備や工夫でしっかり対応できるよう努めています。そうした姿勢そのものが、自分の成長にもつながっていると感じています」

夢だったCAとして働く現在、やりがいを感じる瞬間は何度もありました。

「特に心に残るのは、お客様が飛行機を降りる際、“Great job, guys!  Thank you so much!” といった言葉をかけてくださる時。感謝の気持ちを伝えていただけると、“このフライトに乗務できて本当によかったな”と、心から思います」 

また、クルー同士の意思疎通や仕事の調整などがスムーズにいき、サービスやフライト全体が何事もなく無事に終えられた時も充実感でいっぱいに。「お客さまとの出会いも、仲間との信頼関係も、この仕事ならではの醍醐味」と話します。

自分の「やってみたい」に素直でいたい

「20年越しの夢を叶えた平凡な強運おじさん」と自らを称するおりょうさん。

「“何歳になってもやりたいことに本気で取り組むこと”は素晴らしいですが、“特にやりたいことがない”という人も多いのではないかと思うし、それも自然なこと。大切なのは、自分の人生に自分で舵を取る意識を持つことではないでしょうか」

とはいえ、「こんな歳で?」「失敗したらどうしよう」という圧力に縛られてしまうことは多々あります。また、「やりたい」と思っていたけど、実はそこまで本気ではなかったと気づく場合もあるかもしれません。

「でも、それでもいいんです。まずは“やりたいことを探すために動いてみる”くらいで十分ではないでしょうか」

おりょうさん自身、食べものやアクティビティ、旅行先や異文化に対して、「苦手」と決めつけることがないタイプで、むしろ、やってみたら案外好きだったことが多く、好きなものが自然と増えたのだそう。

それゆえ、好きなものは最初から明確にあるものではなく、経験や継続の中で育っていくものと思っています。

「ちょっと気になる程度でも動き出すことに意味があるように思います。やってみて違うと感じたら、また別の選択をすればいいんです。人生における選択肢に“正解”や“間違い”はないと思います」

これまでさまざまな選択をしてきたおりょうさんだからこそ、説得力のある言葉。年齢に関係なく、「やってみたい」という感覚に素直になって、小さな一歩を踏み出す。これこそ、自分の人生を自分で動かす原動力ではないでしょうか。

■空飛ぶおりょうさん X @risetogether_ca

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