飛行機を揺らす「乱気流」を解説 上空では何が起こっている?

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飛行機は、乱気流に遭遇した際に揺れることが多いと言われています。乱気流とは、気流の突然の乱れのことで、飛行機が乱気流に遭遇すると機体が上下方向などに大きく揺れます。乱気流にどのようなものがあるのか、また、天気のプロがどのような資料を見て揺れを予想しているのかご紹介します。


乱気流は主に4つ

乱気流は発生要因によって以下のように分類することができます。
①力学的乱気流
②人工的乱気流
③雲による乱気流
④晴天乱気流
それぞれについて詳しく見ていきましょう。


力学的乱気流

力学的乱気流は、建物や地上の物件・地形の起伏により生じる乱気流を指します。
地上に近い低高度では、空気が空港周辺の建物や滑走路近くにある崖・丘などにぶつかることにより、上昇気流や下降気流が発生することで気流が乱れます。起伏のある地形や、建物側から風が吹いてくる場合は、離着陸の直前で揺れる可能性があります。

地上から離れた上空では、山岳波による乱気流があります。
山岳波とは、気流が山を越えるときに生じる乱気流です。空気が山にぶつかり強制的に上昇し、周囲の空気と比べて重くなったタイミングで下降気流に変わり、また周囲の空気と比べて軽くなったタイミングで上昇流となります。この振幅運動の過程で雲が生じると、笠雲やレンズ雲が発生します。山岳波は雲を伴わない場合もあり、山頂付近の風が弱く、逆転層がある場合、高高度まで影響を及ぼす場合がある危険な現象です。
山岳波の影響が出てくるのは、主に偏西風が強まる冬場です。山脈の風下側を通過する場合は揺れる可能性があります。


人工的乱気流

人工的乱気流は、自然現象以外の原因で起きる乱気流を指します。代表的なものは、前回の記事でも出てきた後方乱気流と呼ばれるもので、その中でも翼端渦が有名です。翼端渦は、主翼下面よりも主翼上面の空気の圧力が小さいため、翼端で空気が下から上に回り込むことで発生します。飛行機の後方やや下に向けて流れ、左右に少し広がりながら後方に向かいます。

翼端渦は、低速度で飛行し翼幅が短く、機体重量の重い大型機ほど、大きく強い乱気流を生み出す特徴があるため、離着陸時に特に注意が必要です。翼端渦の発生を完全になくすことはできないため、航空機同士の間隔をとることで翼端渦を避けるようにしています。その他、後方乱気流の例としては、エンジンの排気によるジェットブラスト、プロペラの回転で生じる後流、ヘリコプターのローターが生み出すダウンウォッシュが挙げられます。


雲による乱気流

雲による乱気流は、上昇気流や下降気流により起こる乱気流を指します。夏場によく見られる積乱雲などの積雲系の雲や、中層雲底乱気流、巻雲などの高層雲付近での乱気流などがあります。

発達中の対流系の雲の中では上昇気流が発生しています。この上昇気流に飛行機が遭遇すると揺れることがあります。積乱雲の発達最盛期では、上昇気流が強いため成層圏の上にまで雲が達する場合もあり、雲頂付近でも揺れる可能性があります。また雨が降り始めると、蒸発により下降気流が強まるため雲底でも揺れる可能性があります。この下降気流は、地上付近ではダウンバーストと呼ばれ、飛行機の運航においてとても危険な現象になります。

また、中層雲の雲底においても大きく揺れる場合があります。雲底の下の空気が乾燥している場合、先ほどの積乱雲の場合と同様、雨粒の蒸発により周囲の空気が冷やされ重くなるため、下降流が強まります。この強まった下降流による揺れを中層雲底乱気流といいます。

高層でも巻雲がはけのようになびいている場合、大きく揺れる可能性があります。先ほどと同様で、氷晶が昇華して霧散していく際に下降流が強まるからです。
雲に伴う乱気流は、雲の付近で揺れるため視覚的に予想をしやすいです。前線や低気圧接近時など、悪天候時に雲の付近を通過する場合は揺れに注意が必要です。


晴天乱気流

晴天乱気流はClear Air Turbulence(CAT)とも呼ばれ、雲のない(巻雲は除く)晴天のエリアで発生する乱気流を指します。雲のないエリアで発生することが多いので予想するのが難しい乱気流です。

一般的に晴天乱気流は、ケルビン・ヘルムホルツ不安定によって発生すると言われています。簡単にいうと、大気の中にたまたま性質の違う空気が上下に接した境目がある場合、境目の上下で風の流れが違うと境目が乱れることで発生します。空気が湿っており、雲がある状態だとケルビン・ヘルムホルツ不安定波が可視化され特徴的な雲として現れることがあります。

晴天乱気流が発生しやすいのは、風向や風速が大きく変化する場所と言われています。


乱気流の予測はどう行う?

乱気流はどのように予測・把握しているのでしょうか?
気象庁では、空域予報班という航空気象専門のチームがあり、日本周辺空域において、運航に影響のある現象の予測などを行っています。航空気象用の資料は、気象庁のHPからも確認することができ、上図の国内悪天予想図では、乱気流が発生しやすいとされるエリアが描画され、その理由や判例が左側に記されています。
またC-PIREP(※) と呼ばれる、航空会社間での乱気流や着氷などの天候状態を情報共有するシステムがあり、乱気流に遭遇した場所や高度・強度などの情報を、リアルタイムで共有し後続便に伝えています。

天気の予想が難しいように、乱気流の発生予想も難しいため、航空気象用資料による予測や、先行便から送られてくるC-PIREPなどの実況を総合的に考慮して、航空機のルートや巡航高度は決められているようです。悪天が予想される場合は、事前に揺れについてのアナウンスがパイロットや搭乗前の係員から説明があることもあります。

※C-PIREP…Common PIREP。国土交通省のシステムで各航空会社で持つPIREP(操縦士報告)を集約・形式を統一したもの。乱気流や着氷、天候状態が報じられている。


まとめ

今回は、飛行機の揺れの原因となる乱気流についてみてきました。
飛行機に乗る際は、気象庁の航空気象予報をみて揺れるエリアを予測してみたり、遠くに見える揺れそうな雲を上から眺めてみるのはいかがでしょうか。晴天乱気流など予測が難しい乱気流も存在するため、飛行中は常にシートベルトを着けましょう。



〈参考文献〉
「空の科学」が一冊でまるごとわかる ベれ出版
気象庁 第3章 乱気流とウインドシヤー

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