琵琶湖上で子どもたちが環境について学ぶ学習船「うみのこ」をモデルにした教育システムが、中米ニカラグアのマナグア湖に導入されている。水質汚染が問題になっている同湖での取り組みは7月で4年目に入り、子どもたちが学習を進めることで地域住民全体の環境意識も高める活動として注目されている。
マナグア湖はニカラグアの首都マナグアにあり、面積は琵琶湖の約1・5倍ある。付近の鉱山から工業用水が流入し、農業用水、生活用水もそのまま流れ込んでいる。近年、湖岸周辺に遊園地や飲食店が造られるなど、観光振興に向けた動きが活発化しているという。
こうした動きを受け、JICAニカラグア事務所の日本人スタッフが「汚れた湖が美しく生まれ変わって、子どもたちが泳いだり、水が飲めたりできるようになれば」と、湖に人々が関われる取り組みを提案。環境の保全・再生と経済発展を両立させた琵琶湖の経験が生かせると、同事務所はマナグア市役所とともに2020年に「BIWAKOタスクフォース」を設置した。
とりわけ重視したのが環境教育で、うみのこを参考に学習プログラム「ニカラグア版UMINOKO」を企画。マナグア湖で活躍していた観光船を学習船とし、21年7月から小学4、5年生にあたる児童を乗せて活動を始めた。
子どもたちが取り組む環境プログラムの具体的内容や科学実験の方法は、うみのこを運営する滋賀県の「びわ湖フローティングスクール」が指導している。現在も、現地の教員からの質問にオンラインで答えるなど活動を支えている。21年は127人、22年は192人、23年は651人が活動に参加したという。
タスクフォースメンバーで、琵琶湖のうみのこに乗船したこともあるイメルダ・リオスさん(30)は「子どもたちは自分の好きなものを宣伝するのが得意。UMINOKOで得た知識が両親や友人、近所の人たちに広められ、マナグア湖はよりよい環境になるはず」と期待している。
県琵琶湖保全再生課は「うみのこは、フィリピンやコートジボワールなどでもやりたいという動きがある。ニカラグアでの事例を発信していきたい」としている。
うみのこ 1983年に就航し、滋賀県内外の小学5年を対象に宿泊体験学習を行っている。県内では全小学校が参加し、これまでに約61万人が乗船した。