亡き夫に隠し子が発覚 遺産めぐり妻と愛人が壮絶バトル その場が凍りついたマウント発言とは【元銀行員は見た】

八幡 康二 八幡 康二

銀行に限らず、昔も今も相続手続きに関わる職についている人は、多くのドラマチックな場面に遭遇します。元地方銀行員で、現在は独立して個人事業を営んでいるSさんもその場面に遭遇したひとりです。今から10数年前、当時課長職にあったSさんは隠し子に係わる案件に携わったことがあるそうです。

亡き夫に隠し子が発覚した際の妻と愛人間に起こったエピソードを、Sさんに聞きました。

ーどのような経緯で隠し子が判明したのですか

このケースは60代のご主人Aさんが急な病気で亡くなったというものでした。遺されたのは妻と子供2人です。急な出来事だったので遺言書はありませんでした。葬儀を終え、落ち着いたころに私はAさんの妻から手続きの相談を受けました。Aさんの戸籍を確認したところ、そこに妻の知らない認知された子供がいることが明らかになったのです。

「最初は何かの間違いだろう」と楽観されていたのですが、私たちが提示した戸籍謄本の原本を確認して「これは事実だ」と理解されました。隠し子の存在を知ったAさんの妻は、顔を青ざめながら言葉を失くしてしまいます。私たちの前で取り乱さないよう必至に耐えているようにも見えました。

ーAさんの妻と愛人は会うことになったのですか

遺言書がない場合の預貯金の解約手続きは、遺産分割協議の成立が必要です。どのように遺産を分けるかを相続人同士で話し合うのですが、Aさんの妻は愛人とその子供を自宅に招くことを拒否し、愛人もまたAさんの妻には会いたくないと対面を拒んでいました。

仕方がないので、銀行の応接室で対面することになったのですが、対面しても2人は目を合わそうともしません。一言の会話もなく、応接室は独特のピンと張りつめた空気に包まれていました。私は早く打合せを終えて、部屋から出ていきたい気持ちで一杯でした。

当時の記憶も不確かになりつつありますが、妻と愛人の双方を見比べると顔立ちがよく似ていて、故人はこういう顔立ちが好みだったのかな、という印象を持ったことを覚えています。

一方で、いざ隠し子の相続の話になると、妻と愛人は今後の生活もあるからかお互いの主張を激しくぶつけ合います。どのように財産を分割するのか、なかなか決着がつかず私たちの希望も空しく打合せは長時間に及びました。

お互いに疲れが見え始めたころ、なんとか無難な線で話し合いは決着しました。私もやれやれとホッと胸をなでおろしたのですが、話はこれでは終わりません。

最後に愛人はAさんが愛用していたメガネを、形見として譲り受けたいと懇願してきたのです。肌に身に着けるものなので、と妻が返事をためらっていると、愛人は笑みを浮かべて「私とお揃いなんです」と言い放ちました。

愛人はさっさと席を立ち、まだ未成年の子どもとともに応接室を後にしました。Aさんの妻の顔色を恐る恐るうかがうと、血の気が引いて紙のようでした。女同士の壮絶なマウント合戦に慄然とすると同時に、「これで話し合いは白紙か?」と愛人に怒りすら覚えました。

ーでは、話し合いは白紙になってしまったのですか

いいえ、その後専門家にも間に入ってもらい、なんとか遺産分割協議書は作成できました。しかし2か月後に、さらに驚きのニュースが私のもとに届きました。

なんとAさんの妻が亡くなってしまったのです。隠し子がいたことを知ったショックで気を病んでいた彼女は、応接室での会談後に寝込みがちになったそうです。長年連れ添った夫に裏切られたという事実を突きつけられ、気力もなくなったことが推測されます。

その後しばらくして身体を悪くしてしまい、子供たちに見送られて旅立ってしまったのです。おそらくAさんの妻はあちらの世界でAさんと再会し、やりきれない思いをぶつけたことでしょう。

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