女性初の弁護士のひとりであり、戦後は家庭裁判所の発足に尽力、女性初の裁判官となった三淵嘉子さんをモデルに、佐田(旧姓・猪爪)寅子(伊藤沙莉)の法曹人生を描いた連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合ほか)が放送を残すところあと2週、いよいよラストスパートに突入した。半年間の物語を、作り手はどんな思いで紡いだのか。長丁場の執筆を終えた脚本家の吉田恵里香さんに、制作への思いを聞いた。脱稿したときの率直な気持ちについて、吉田さんはこう語る。
最終回までエピソードがぎゅうぎゅう詰め。あと3カ月ぐらいあってもよかった
「後半の脚本を執筆しているときから、『もう終わっちゃうな』『終わらないでほしいな』という気持ちがすごくありました。同時に、撮影のスケジュールや、色々なこととの組み合わせもあって、『やっと最後まで書き切った』という感じでもあります。最後までずっとストレスなく楽しく書けましたし、本当に俳優さん、スタッフさん含め、恵まれた現場でした。あともう1クールぐらいあってもよかったかなって思っています。やり切って、すごく満足して出し切ったんですけど、『あの人のことをもうちょっと深掘りできたな』みたいな気持ちはすごくあるので、半年とは言わないけど、あと3カ月ぐらいあってもよかったな』というのが正直な気持ちです」
また、ネタバレしない範囲で最終回について聞くと、
「私としては、最終回としての満足度はもちろんあるんですけど、第1週、第2週で出てきた人たちやエピソードがその後どうなったのかとか、振り返りたかったという思いもありました。でも、構成の中でやらなきゃいけないことがいっぱいあって。最終回までエピソードがぎゅうぎゅうに詰まってます。これも『虎に翼』っぽいんじゃないかなと」
と語った。
小橋がこんなに愛されるとは思っていなかった
さらに、執筆時点の想定を超えてきたキャラクターは?という質問には、
「小橋(名村辰)ですね。演じてくださった名村さんの力も大きいですが、すごく愛されているなと思いました。最初の段階では、ここまで長く登場するとは想定していなかったんですが、第11週の家庭裁判所発足のときに、メンバーはまったく新しい人じゃないほうがいいなと思っていたんです。『小橋と稲垣(松川尚瑠輝)をここで出すのはどうか』というアイデアには皆さん賛同してくれましたし、元々そういうアイデアも現場で出ていたようです。後半になるにつれて、『小橋の落とし所』をすごく意識しました」
朝ドラの執筆は長年の夢だったという吉田さん。今後の夢を訊ねると、
「また朝ドラをやることですかね。なるべく早いうちに」
と笑顔で語り、最後に、
「こんな取材を組んでもらえたってことは、きっと何かしら自分がやったことに意味があったのかなと思っているので、本当にありがたいです。私はあまりネットの反響を見ないのですが、喜んでくれる視聴者の方のお陰だなと思います。放送はもうちょっと続きますが、最後までよろしくお願いします」
と結んだ。残り2週間、物語の終わりに寅子はどのような「答え」を見つけるのか。見守りたい。