今週放送の連続テレビ小説『虎に翼』(NHK総合ほか)第15週第72・73回では、これまでずっと「縁の下の力持ち」として猪爪家を支えてきた花江(森田望智)が寅子(伊藤沙莉)に気持ちをぶつけるシーンが印象的だった。女学校時代の親友から義理の姉と妹の関係になり、互いに戦争で夫を失いながら生きてきた花江と寅子。物語の始まりから(設定上)20年の時を経たいま、改めて花江という人物について、役作りについて、森田望智に語ってもらった。
「花江と寅子は、根本的なところで似ている」
花江役のオファーが来たときは、どんな思いだったのだろうか。
「『虎に翼』の制作発表で伊藤沙莉ちゃんがヒロインだと発表されて、『これは絶対に見るぞ!』と思いました。沙莉ちゃんとはこれまでに3回共演させていただいているのですが、彼女のお芝居は本当に素敵だし、題材もとても面白そうで。他の役のオーディションはないのかな? なんて思っていたところ、声をかけていただきました。
これまでに朝ドラヒロインのオーディションは何度も挑戦してきました。出演させていただくのは今回で2回目となりますが、(編註・森田は2021年前期『おかえりモネ』に野坂碧役で出演)お話をいただけたことに、すごくうれしかったのと同時に責任感と、私を信頼してくださったのだというありがたみを感じました」
花江という役どころについて聞くと、こう語った。
「寅子と花江は対照的だと思われがちなのですが、私は、根本的なところでふたりは似ていると思っているんです。ふたりとも地に足がついていて、目的のために努力を惜しまない人。着実に一歩一歩、自分の成し遂げたいことを実践していく強い女性という意味で、根っこの部分は同じなのではないかと。『自立したひとりの女性』を、寅子は仕事で体現していますが、家を守る役割も、女性のひとつの生き方であり、尊い存在であるということを花江は体現しているのかなと。そこを大事にして演じています」
台本の台詞の語尾についていた「♡」や「♪」からイメージして…
また、役作りについては、
「内面の根っこの部分では寅子と通じるところがあっても、若い頃の花江の話し方は、寅子と対照的になるようにしました。吉田恵里香さんが書かれた台本をいただいて最初に読んだときに、花江の台詞の語尾に『♡』や『♪』がついていたんです。そこからイメージして声のトーンを高くした喋り方にしました。さらに、衣装合わせのときに衣裳スタッフさんが『花江ちゃんはピンクだよね』と用意してくださったのが、お花があしわれたとても可愛らしいピンクのお着物。これを選ぶ女の子なんだ、これが似合わなくてはいけない、というところから逆算して、あの喋り方になりました。いろんなイメージが組み合わさった結果、という感じです。
その後花江は結婚して母になり、旦那さんの直道(上川周作)を戦争で失い、お母さんとしてどんどんたくましくなって、どっしりとしていきます。少しずつ声を低くしたりしていますが、あまりやりすぎると不自然になってしまうので、考えすぎず、でも頭の片隅には年齢を重ねた『気の持ちよう』というのは意識しています。これからさらに歳を重ねていく花江を演じるのが楽しみです」
とコメント。最後に、今後の花江と『虎に翼』の見どころについて聞いた。
「いろんな登場人物の、こっちの気持ちもわかるし、あっちの気持ちもわかる、というドラマになっていると思います。お互いぶつかってしまうときもあれば仲良くなるときもある。『虎に翼』という群像劇のなかで、登場人物みんなを好きになっていただきたいです。コメディを交えながら、法律をわかりやすく組み込んでいる作品だと思うので、登場人物たちと一緒に考えたりしながら、楽しく観ていただければうれしいです」
母として、自立したひとりの女性として、どんどんたくましくなっていく今後の花江の歩みにも注目だ。