販売促進のため街頭などで配布されるポケットティッシュ。
たいていは商品や店舗の名前、キャッチコピーなどがわかりやすく書かれているものだが、今SNSで大きな注目を集めているのは何を伝えたいのか解読不能な「暗号ティッシュ」だ。
「■暗号ティッシュ
2022年4月に渋谷駅東口で配布されていたポケットティッシュです。暗号のようなものが書かれていますが、解読不能です。
どなかた解読してくれませんか!!!!!!!!!!」
件のティッシュを紹介したのは都市伝説の調査をテーマとするYouTubeチャンネル「THEつぶろ」のXアカウント(@THEtubro)。
フリー素材風の女性モデルの画像があしらわれ一見普通のデザインなのだが、よく見ると「院み話Ωみしつ常常」「13ツ 均てて八みろ渡みし帖ββ仙」など意味不明の文言が綴られたこのティッシュ。
THEつぶろの運営者にお話を聞いたところ
「こちらは私のチャンネルの視聴者さんからいただいた写真で、2022年の4月に渋谷駅東口前で配っていたポケットティッシュを受け取り、ずっと手元に保管していたものだそうです。詩人で現代芸術家の渡辺八畳さんという方が制作されたアート作品であることがわかりました」とのこと。
制作したという渡辺八畳さん(@yoinoyoi)に話を聞いた。
ーー制作・配布した経緯は?
渡辺:これには2系統の理由があります。ひとつはネットに公開しているステートメントの通り、インターネットの発達に伴って世の中の謎の総数が減ったことを残念に感じていたことです。私は昔からホラー系統が好きで、小学生の頃は図書室にあった『学校の怪談』や『怪談レストラン』シリーズを端から読んだり、「検索してはいけない言葉」にハマった時期もありました。今でも『Not Found』シリーズのようなホラー映像作品をよく視聴します。特に都市伝説の類は昔から大好きで、10代の頃は都市伝説系のサイトをよく閲覧していました。
しかし「本当か嘘かわからない」ことが重要である都市伝説は、インターネットが普及した今日において存在が困難です。幼少期から慣れ親しんだものがその居場所を失っていくのは寂しいものです。だからこそ、これまで楽しませてもらったジャンルへのささやかな恩返しとして、私自らこの世に「謎」を1つ提供しようとしたのです。
ーーティッシュがモチーフであることも理由ですか。
渡辺:もうひとつは現代アートを発表する上で重要視される「それをその作者が作ることの必然性」…いわゆるナラティブです。私は子供の頃は鼻炎がひどく、ティッシュは欠かせませんでした。しかし実家の福島ではティッシュ配りは全く見る機会がなく、そのせいで鼻水が出るのに手持ちのティッシュを切らせてしまうことが多々ありました。
子供の私にとってティッシュ配りは、それ自体が非常に近しい存在だったこともあり、一度その目で見てみたい憧れの対象だったのです。そんな時代を経て東京にいる今、ポケットティッシュを配るということは、幼少期の自分が望んでいたことの実践でした。
ーー今回の再注目へのご感想を。
渡辺:2年前にティッシュを配った時はTwitterでちらほら反応があっただけで、ここまでではありませんでした。ただ、それぐらいの規模感のほうがティッシュをもらった人が真相にたどり着けず、謎として残り続けるのでむしろ満足していました。それが2年越しに反響があったわけですが、まったく予想していない規模でした。私自身こういった都市伝説的なものが好きでティッシュを作ったわけですが、一般の興味を引くものとは考えていませんでした。こういうのが好きな人は案外たくさんいるのですね。
特に意外だったのが真相が知れ渡るまでのスピード。ネットに公開しているとはいえティッシュ自体にヒントとなるような文字列は入れておらず、そう簡単にはネタ明かしにはたどり着けないように作ったつもりです。それが1日足らずでばれてしまったのは、私の想像以上にインターネットが発展し、そしてなにより人々のインターネットを駆使した真相探索力が上がったからだと思っています。
ただ、ここまでの反響になっても依然としてこのティッシュが何かを知れていない人も存在するはずです。作者としては、そういう人には今後もずっとティッシュを不思議がっていてほしいです。
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SNSユーザー達から驚きの声が寄せられた今回の投稿。読者のみなさんはこんな謎のアイテムを手にしたことはあるだろうか。
THEつぶろ関連情報
YouTubeチャンネル:https://youtube.com/@thetuburo
Xアカウント:https://x.com/THEtubro
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渡辺八畳さん関連情報
Xアカウント:https://x.com/yoinoyoi