歩道と車道の区切りとして何気なく毎日、目にしているガードパイプ。気にも留めていない人がほとんどかと思うが、実はその地方に特有のデザイン(青森のりんごなど)や、人間の眼を思わせるものなどさまざまなデザインがあることをご存知だろうか? 春が近づき目的のない散歩が楽しくなってきた今日この頃、日本初のガードパイプ偏愛本をリリースされた岡元大さんに、ガードパイプの楽しみ方やトリビアなどを聞いてみた。
岡元さんによれば、そもそもガードパイプとは「横断防止柵」が正式名称。道路には国道、県道、市道、私道といった種類があるが、それぞれの自治体が発注から設置、管理を担っているという。そのため、道路を管理する自治体が変わると、「境界」に違う種類のガードパイプが並ぶことになる……というのは衝撃だ。
ーーところで昨年末の刊行から、各種メディアに取り上げられて話題ですね。改めて今思うことは?
「ブログで紹介したりポツポツと各所で話したりと、自分の周囲だけで柵好きを増やしてきましたが、書籍刊行によってブワッと全国に広がったな!とわかりやすい体験をしました。僕はふだん出版社に勤めているので日々書籍のPRをしていますが、正直ここまで広く取り上げられるとは思ってなかったので素直に嬉しいです。そして、こんなにも『実は気になってた!』という人々がいたんだな、と。なんで今まで教えてくれなかったのーー!!と喜んでおります」
ーー何度も聞かれている質問かと思いますが、都内で今いちばん気に入っているガードパイプは?
「『杉並区漢字ガードパイプ』がお気に入りです。漢字の『杉』にも、杉の木の形にも見えるものと、漢字の『並』のコンビネーションがたまりません。北区の『北』も愛してます」
ーー漢字モチーフのガードパイプは気づかずに歩いていることがほとんどかと思いますが、気づくと「おおっ!なるほど!」と感動しますね。また、こういったガードパイプのモチーフを調べていくことで、その街の知られざる一面を知り、さらに好きになっていくというお話が素敵だと思いました。実際にそういう体験もありましたか?
「僕は東京郊外にある小平市が地元なのですが、駅前にはブルーベリーをレリーフに刻み込み、豪華な柵にはめ込んだタイプがズラッと並んでいます。小平市は日本におけるブルーベリー栽培発祥の地で、市民には自明のことなんですが、ガードパイプでもそこをしっかりとアピールしているのは感動しました。
さらに、西武新宿線 花小金井駅前には『自転車ガードパイプ』が設置されています。この脇には『多摩湖自転車歩行者道』が通っていることからのモチーフ。さりげないのですが、気づくと少しだけうれしくなりますよね」
ーー刊行後、全国のさまざまな珍しいガードパイプの情報が寄せられていると思いますが、これは!というものがあればぜひ紹介してください。
「文京区の『弥生美術館/竹久夢二美術館』前にある、隠れハート型ガードパイプです。区議さんがXで呟かれたのを見て引用リポストしたところ、ガードパイプ本のデザイナーさんがなぜか場所をご存知で、教えていただき訪問しました」
ーー抒情画家や少女漫画家のロマンティックな作品展示で知られる美術前にあるということで、もしかしたらハートモチーフはわざわざこの場所のために……?と興味がかきたてられますね。書籍の第二弾も楽しみにしています! 最後に、これから本書を手にとる、読者へのメッセージがあればぜひ。
「ガードパイプはキッカケにすぎないと思いますが、街を歩くと『おや?』と首をかしげることが増えるはず。新たな偏愛のセカイにいざ!!」
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と、そんなわけで今回は都内にあるガードパイプを中心にお話を聞いてみた。ちなみに、岡元さんはTVドラマを観ているときにも、ガードパイプからロケ地を推測したり、アニメの作中に描かれたガードパイプが〇〇区の〇〇〇だ!……というようなマニアックな楽しみ方もされているとか。
機能だけを考えれば変哲もないデザインで良いところを、ほんの少しだけ、そのエリアならではの個性をプラスする。そのひかえめな遊び心がなんとも愛おしく、人間味すら感じてしまうガードパイプ。本書には都内以外の、青森から沖縄まで各地方のガードパイプもたっぷりと紹介されているので、ぜひあなたのガードパイプ散歩のお供にしてほしい。
▽創元社/まちかどガードパイプ図鑑
https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=4696