高齢ドライバーによる事故で…飼い主をかばって亡くなった愛犬 “甘えん坊”が最期にとった行動、飼い主の思いは

小森 有喜 小森 有喜

父の心身を支えたまるちゃん

まるちゃんを飼ったきっかけは、信正さんが脳腫瘍を患ったことだった。後遺症で左半身に麻痺が残り、その影響で落ち込むことが増えた。病院で「犬でも飼ってみたらどうか」と助言され、家族で何気なく寄ったペットショップで出会ったのが生後5カ月のまるちゃんだった。値引きされて「売れ残り」のような扱いだったというが、信正さんがいたく気に入り「飼うならこの子だな」の一声で家族に迎え入れることに。初めて飼ったペットだった。

手術で、運動機能を司る小脳をほとんど摘出していた信正さんだったが「きちんとこの子の世話をするために」と筋トレに励んだ。1日2回のまるちゃんの散歩もほぼ欠かさず、精神的にも回復していったという。今も麻痺は残るものの、医者からは「よくこの状態で歩けていますね」と驚かれるそうだ。こさかさんも「父が今も元気なのは完全にまるのおかげ」と話す。

一家の中心だったまるちゃんを失い、気持ちに区切りがつくことはない。それでも家族は信正さんに「これで散歩にも行かなくなって体を弱らせたら、まるが命を救ってくれたことが無駄になってしまう」「まるは天国からみんなの元気な姿を見たいはず」と励まし、家族で何とか前を向こうとしているという。

ドライバーは「もう免許更新しない」

先日、事故を起こしたドライバーが謝罪に訪れた。心から反省している様子で「何をしても気は済まないと思うが、損害賠償も思うように請求してほしい」と言われ、次回の免許は更新しないという旨も伝えられた。

真摯に反省し、何とかして償いたい気持ちは伝わったという。ある日、まるちゃんの遺影と遺骨を前に、信正さんが手を合わせながら「許してやってな」と話しかける姿を見たというこさかさん。「父の思いに家族も寄り添いたい」と、今後運転しないことを条件にドライバーとの示談に応じる予定だという。

Xの投稿には、追悼や励ましの言葉が多く寄せられている。「家族思いの賢いワンちゃん」「勇敢で愛情深いワンちゃんがいたことが知られてほしい」「きっと今でも家族を見守っているはず」…。反響は予想以上で「たくさんの人に褒めてもらえて驚いている」と話す。両親にもコメントを見せ「いつまでも赤ちゃんのように甘えん坊だったうちの子が、名犬扱いされるなんて」と、深い悲しみの中でも少しだけ心が和らぐ瞬間があるという。

今回の出来事を知った人に呼びかけたいこととして、こさかさんはこう語る。「車の事故は一瞬で、他人にとんでもない思いをさせてしまう。気をつけないといけないと改めて思ったし、皆さんも注意してほしい。同じようなことは起きてほしくない」

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