1972年に放送が開始された『ウルトラマンA』は主人公・北斗星司と南夕子の2人がウルトラリングを合体させることでウルトラマンAに変身する設定など、それまでのウルトラマンシリーズにはない斬新な企画が盛り込まれていました。そんな企画のひとつとして「怪奇シリーズ」と銘打ったエピソードが放送されたことが印象に残っているファンも多いでしょう。本記事では「怪奇シリーズ」のエピソードを振り返り、なぜ怪奇がテーマになったのか考察します。
『ウルトラマンA』の「怪奇シリーズ」エピソードは、「夏の怪奇シリーズ」と「冬の怪奇シリーズ」に分かれています。
「夏の怪奇シリーズ」は第15話から第17話の3話で、「冬の怪奇シリーズ」は第41話から第43話「冬の怪奇シリーズ 怪談 雪男の叫び!」の3話でそれぞれ放送されました。
筆者が特に印象深く記憶している「夏の怪奇シリーズ」は第15話「夏の怪奇シリーズ 黒い蟹の呪い」です。
同話の見どころは天然記念物であるカブトガニ「大蟹」。2人の男に「泥棒小僧」呼ばわりされていた少年・夢二は、盗み出した大蟹と貝殻を通じて会話をしていました。その会話の最中、彼は大蟹から大蟹超獣キングクラブの居場所を知らされます。
そしてその予告通りに現れたキングクラブとウルトラマンAと対戦が始まるのですが、なぜかウルトラマンAは四股を踏み相撲を始める斬新な展開に。対戦終了後、夢二が貝殻を通して死んでしまった父親と会話し、実は冒頭から会話していた大蟹は、最初から父親だったのかもしれません。
また「冬の怪奇シリーズ」の第42話「冬の怪奇シリーズ 神秘! 怪獣ウーの復活」も印象的です。初代『ウルトラマン』に登場する怪獣ウーがタイトルに描かれており、懐かしさもありワクワクしていたことを思い出します。
同話は父親と娘が猛吹雪の飯田峠に現れた怪獣アイスロンによって襲われるところから始まります。娘を庇って谷底に転落し息絶えた父親は、父親を捜索しにきた娘がアイスロンに襲われているところ、伝説怪獣ウーとなって戦うのでした。
娘を思うあまり怪獣になってでも守ろうとする親子愛と、ウーの再登場という展開に胸を躍らされるエピソードでした。
そもそも『ウルトラマンA』は市川森一氏、上原正三氏、田口成光氏の3人の脚本家による競作という体制で制作されました。そして三者三様の個性をぶつけて作品の質を向上させようという狙いがあったようです。
その結果今までのシリーズとは異なり、北斗と南の男女2人による変身などの新展開が生まれたのでしょう。しかし物語が進むにつれ3人の思想の違いが表面化していき、さらに新規シナリオライターが参入したことで設定が紆余曲折してしまいます。当初は変身時に2人必要だったのが途中から北斗だけで変身できるようになったのはその影響かもしれません。
長く続くウルトラマンシリーズなのでマンネリを避けるためにも制作側は常にチャレンジを求められています。子どもの頃には不思議な展開だと思っていても、大人になって見ると納得するエピソードもあるはずです。昔のウルトラマンシリーズを今振り返ることで、未だ見つかっていない新たな発見があるのではないでしょうか。