ドライバー不足が深刻化してきているタクシー業界。株式会社帝国データバンク(東京都港区)がこのほど発表した「タクシー・ハイヤー業界の人手状況と損益動向」についての実態調査によると、タクシー会社の1割超が、この10年で「従業員数が半減」していることが分かりました。また、2022年度の業績動向では、対象企業数約540社のうち、約半数が「赤字」であることも分かったそうです。
調査は、2023年8月末時点における全国のタクシー・ハイヤー企業2428社を対象に実施されました。なお、従業員(人手)にはドライバー以外の職種も含まれるケースがあるとしています。
調査の結果、10年前の2013年と比べて、対象2428社のうち69.7%(1691社)で「ドライバーを含めた従業員数が減少」していることが判明しました。このうち、2013年からの減少率が「5割以上」と答えたタクシー会社は14.5%(352社)にのぼっています。
さらに、「1社あたりの従業員数の推移」を見ると、2013年は平均で「66人/社」の水準だったものの、2023年8月時点では「52人/社」にまで減少し、10年前から約2割減となりました。特に、コロナ禍でタクシーの売り上げが大きく落ち込んだ2020~2022年にかけて、前年からの減少率が拡大しています。
また、「従業員数が半減」と答えたタクシー会社の割合を都道府県別(本社所在地)に見ると、最も高かったのは「茨城県」で29.2%。次いで、「香川県」(29.0%)、「奈良県」(25.0%)などの地方を拠点とするタクシー会社が上位を占める一方で、「埼玉県」や「大阪府」など、需要の大きい都市部でも、従業員数が大幅に減少したタクシー会社が多く見られました。
タクシー・ハイヤー業界では不足するドライバーの確保に向け、賃上げによる待遇向上の必要性が指摘されているものの、2022年度の業績動向では、需要回復や単価上昇を受けてもなお46.7%と約半数が「赤字」の状況で、賃上げ原資の確保が容易ではない現状も見られるといいます。
その一方で、「増益」と答えたタクシー会社は2021年の26.1%から43.1%と増加しており、コロナ禍による移動制限の緩和に伴う移動需要の高まりや、全国各地で初乗り料金の上限引き上げといった、実質的な値上げを背景に客単価が上昇するなどの追い風が吹いていることもうかがえました。
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調査を実施した同社は、「配車アプリの活用で”流し営業”や”歩合制”を廃止し、安定した収入環境をPRすることでドライバーの維持・確保につなげるタクシー会社もある。時給制の採用や、企業内保育所の設置などでスポット的に働ける環境を整備し、女性ドライバーの応募を獲得するケースもあり、人手確保に向け、勤務体系や福利厚生等の待遇面での柔軟な対応も今後必要となってくる」と述べています。