TBSのニュース番組「報道特集」は10月7日、「緊急特集 ジャニーズ事務所とテレビ局 番組制作の現場で何があったのか」と題して、ジャニーズ事務所とTBSの関係について社内調査結果を放送し、ジャニーズから圧力があったことを認めた。一方、TVerやYouTubeの配信では、TBS社員や元社員80人以上に取材した検証結果をカットし、約16分という短い動画で10月7日から配信していた。
番組冒頭、報道特集の村瀬健介キャスターは「ジャニーズ事務所と広告業界の関係、そして私たちTBSとの関係について取材。メディアの沈黙の背景に何があったのでしょうか」と話してVTRに移りましたが、配信ではジャニーズと広告業界との関係について報じた一方、ジャニーズがTBSに圧力があったか、TBSがジャニーズに忖度(そんたく)したかについては見ることができなかった。
まいどなニュース編集部は10月10日午前、TBSに四つの質問を送った。
①TVerでカットした「ジャニーズからTBSへの圧力検証部分」が何分あったか教えてください。
②「ジャニーズからTBSへの圧力検証部分」をTVerでカットした理由について教えてください。
③TVerでカットした「ジャニーズからTBSへの圧力検証部分」をあらためてTVerやYouTubeで配信する予定はありますか。
④「ジャニーズからTBSへの圧力検証部分」をTVerでカットしたのは、ジャニーズ事務所への忖度(そんたく)ではありませんか。
締め切りとしていた10日午後5時すぎ、TBSから一文だけ回答が返ってきた。
「特集の後半部分は作業上の都合で本日の配信となりました。まもなく配信する予定です。ジャニーズ事務所への配慮などはありません。」
作業上の都合で、前半部分のみ配信となることはあるのか?「ドラマなどで前半部分のみ配信する例を見たことがないが、特別な対応ではないのか」などとTBSに電話で問い合わせたが、「回答内容がすべて」という返答が返ってきた。
テレビ放送された「報道特集」では、TBSの報道局や制作局、編成局の社員や元社員80人以上に取材し、2010年にジャニー喜多川氏が人身事故を起こした際は、人身事故のニュースが「欠番」になったとし、当時の報道局幹部が「『ジャニーズ事務所は面倒くさい』という思いや編成部への配慮が判断要素の1つになった」とジャニーズへの忖度(そんたく)があったことを認めた。また、「この1年の間にもジュリー氏を通してキャスティングをめぐる圧力があった」と圧力を認める証言も放送された。
ジャニー喜多川氏のセクハラ裁判で最高裁決定が出た時、報道局デスクだった日下部正樹キャスターは「勇気をもって声を上げた被害者の方々には、どんな言葉を尽くしてもおわびのしようもありません。私たちは報道機関として当然、持つべき弱い立場の人々に寄り添う思いと想像力を欠いていました」と話し、「さらに深刻なのは、この問題はTBSに限らず、沈黙を続けてきたテレビ局全体の問題だということです」「私たちはまず被害者の救済がどのように進んでいくか、きちんと見届ける必要があります。記者会見で拍手をしている場合ではないんです」と自省を込めて語っていた。
10日午後6時半現在、TVerやYouTubeで配信されている「報道特集」では、TBSの自社への圧力検証部分はカットされたままだったが、その後10日夜、全編が配信され、報道特集のTwitterアカウントは「放送後の厳しいご批判の声をしっかり受け止め今後の取材に取り組んでいきます」と投稿した。Twitter上では「なぜ後半部分は出し渋ったのかも説明していただきたい」と説明を求める声が上がった。