真言宗の僧侶であり、写真家やルポライターとしても活躍する梶井照陰(@syoinkajii)さん。梶井さんが暮らす新潟県佐渡市にあるお寺に、今から3年前、柴犬の女の子、ハナちゃんがやって来ました。
当時はまさにコロナ禍。同居していた祖母の認知症が進み、気持ちの晴れない日々を送っていた、梶井さん。そんな時、以前から飼いたいと思っていた柴犬……ハナちゃんと出会ったそうです。
当時のハナちゃんについて、「店頭で斜め座りをしていた柴犬で、座り方のせいで飼い主が見つからなかったのか、月齢は他の犬より進んでいるのに痩せて心細げに見えました」と、梶井さん。
犬の手も借りたいけど…寝てばかり&邪魔ばかり
佐渡最北端のお寺ですくすくと成長したハナちゃんは、飼い主である梶井さんと一緒に漁に出たり、時には畑作業の邪魔をしたり。そんなハナちゃんの様子を、「なんかすごいじゃま」「犬の手も借りたいけど寝てばかり。そして起きればじゃまばかり」とつぶやき、X(旧:Twitter)に投稿していた梶井さん。たくさんのネット民を笑顔にしました。
梶井さんが暮らす集落は、住民の6割以上がすでに65歳以上という、いわゆる「限界集落」。「住んでいる集落の人口は100人ほどですが、実際は戸籍だけが集落にあり、街で暮らしてる人も多いです」(梶井照陰さん)
佐渡島の豊かな自然の中で暮らすハナちゃんと人々の関わりについて、梶井照陰さんにお話を聞きました。
集落の登場人物が1人増えた感じで、ハナと関わってくれる
ーーハナちゃんはどんな柴犬さんですか?
「喜怒哀楽、表情が豊かなところが可愛い柴犬です。ただ、知らない人にすぐ吠えるところは困っています…」
ーーハナちゃんがいることで、集落の方々との関わり方は変化しましたか?
「集落の人とは昔から顔見知りですので、ハナのおかげで皆さんとの仲が特に深まった、といったことはないのですが、あるお婆さんからは、犬なのに度々キャットフードを頂いたり(笑)、私にとって稲作の師匠である方とは、一緒に田んぼの見回りをしたりしています。
縄張り意識が強いので、新聞屋さんや郵便屋さんに吠えたり、飼い主は肩身が狭い思いをすることもありますが、集落の登場人物が1人増えたような感じで、ハナと関わってくれる方も多いと感じます」
ーーそんなハナちゃんとの日々を、梶井さんが撮影された写真と文章で綴った書籍『お寺のハナちゃん』が発売されましたね。
「はい。柴犬、佐渡の風景、高齢の家族との暮らし…見る人によって注目するポイントがそれぞれある1冊になっているかと思います。写真絵本と表現してくれる方もいらっしゃいましたが、絵本のように何度も繰り返して読んでくださる方もいらっしゃるようです。ぜひ一度手にとってみて頂けるとありがたいです」
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『お寺のハナちゃん』(リトルモア刊)には、梶井さんが撮影した佐渡島の豊かな自然の中で暮らす柴犬と人々、そのつつましやかな日々の暮らしを切り取った写真と文章が満載されています。
「集落の人たちがハナの本を見た感想をよく聞かせてくれる。先ほどもハナの本を読んだと近所のおばあさんから電話がきた。祖母との思い出から身内の介護の苦労まで、いろいろなことを聞かせてくれた。本の出版がきっかけでリアルなつながりが豊かになったと感じる」と、Xに投稿していた梶井さん。「親戚や子どもたちに読ませたい」と、書籍を8冊も購入してくれたご近所の方もいたそうです。
■柴犬ハナちゃんとの日々を写真と文で綴った『お寺のハナちゃん』