初めて訪れた土地で愛猫とはぐれてしまったら…考えたくもありませんが、この夏、そんな経験をした飼い主さんと猫ちゃんがいました。
北海道釧路市に住む河村祐太さん(仮名)が愛猫3匹(ぽんくん、サスケくん、茶々ちゃん)を連れて自宅を出発したのは7月1日のこと。予定していた日程が急遽早まり預け先を確保できず、猫たちを連れて仕事で各地を回りながら広島まで車を走らせていました。
最初の“事件”が起きたのは11日未明。コインパーキングに駐車して仮眠を取っていた河村さんが目を覚ますと、車内にぽんくんとサスケくんの姿がありません。脱走には注意していたつもりでしたが、猫が開閉ボタンを押して窓を開け、脱走してしまったようです。
河村さんは懸命に探しました。地元の方たちの協力を得るため、すぐにパソコンで迷子チラシを作り、近隣の店舗に掲示を依頼。動きやすいようにレンタサイクルも借りました。“初動”としてはかなり適切だったと思いますが、その後、さらなる悲劇が河村さんを襲います。
ある人から「迷子猫を捜すときは仲の良い同居猫の声を聞かせるといい」と聞き、茶々ちゃんの入ったクレートを自転車の前カゴに載せて坂道を下っているときに転倒。落下したクレートの扉が開き、茶々ちゃんが逃げ出してしまったのです。
プロの力を借りて懸命の捜索
愛猫3匹がすべていなくなり、途方に暮れる河村さん。でも、じっとしてはいられません。丸一日、自力で捜した後、プロの力を借りるべく『ペットレスキュー』の「オンライン捜索会議」に申し込みました。ペットレスキューは迷子のペットを捜索する動物専門の探偵社。現場に赴く出張捜索のほか、いつ、どこを、どのように捜せばいいのか、捜索プランを一緒に考えてくれ、迷子チラシの作成や捕獲器の貸し出しなどをしてくれる「オンライン迷子猫捜しサポート」も行っています。
「迷子猫の捜し方は飼育環境、性格、周りの環境、いなくなってからの日数などの組み合わせで1匹ずつ全く異なります。冷静な判断ができない状況で仕方のないことではありますが、ネットで見つけた迷子猫の発見事例を参考に、見当違いな捜し方を続けている飼い主さんのなんと多いことか」
そう心配するのはペットレスキューのスタッフです。今回、河村さんが実践した「迷子猫捜索には同居猫…」というのも、すべてのケースに当てはまるわけではないと言います。そして、チラシ作成のポイントもいくつかあり、例えば、飼い主としてはたくさんの情報を載せたくなりますが、絞り込んだほうが見た人の印象に残りやすいのだとか。河村さんも最初は3匹で1枚のチラシを作成予定でしたが、発注直前にサスケくんを目視できたことから、「サスケとぽんは保護できるかもしれない」と直感的に判断。茶々ちゃん単独でチラシを作ることにしました。実際、2匹は翌日と翌々日に無事保護することができたそうです。
訓練を受けたシェパードも捜索協力
ペットレスキューから提案された捜索プランに従い、1000枚単位のチラシのポスティングを始めた河村さん。その必死な姿に協力者も現れ、ご夫婦でポスティングを手伝ってくれたり、トレイルカメラを貸してくれたりしました。でも、カメラに映るのは茶々ちゃんとは違う野良猫ばかり。なかなか目撃情報も入りません。
そこで投入されたのが、残された匂いで行方不明者等を捜す訓練を受けているシェパードのカールくん。協力者の知り合いであるタキグチドッグスクールのトレーナーさんが、協力者の熱意に打たれ、茶々ちゃんの捜索のためご自身が育成するカールくんを連れてきてくれたのです。猫の捜索をした経験はなく、いわば 「ダメもと」でした。
事態が動いたのは、捜索から2週間後の8月5日。カールくんが匂いに反応を示した3か所を繋ぎ合わせたその先のエリアに再度、迷子チラシをポスティングしていたのですが、その1軒から有力な情報が入ったのです。
河村さんはちょうどぽんくん、サスケくんを連れて北海道へ一時帰宅するフェリーの中だったため、協力者の夫婦が住民の許可を得て捕獲器とトレイルカメラを設置。するとその夜、捕獲器に1匹のキジトラ猫が!送られてきた画像で茶々ちゃんであることを確認した河村さんは、思わず泣き崩れたと言います。当然でしょう。失踪から25日もたっていたのですから。
茶々ちゃんと再会を果たしたのは8月9日。河村さんは感謝の気持ちにあふれていました。
「メンタルが折れかけたとき、いろいろな方が励ましの言葉を掛けてくださいました。親身になって協力してくれる方がいなければ、ひとりでは見つけてあげられなかったかもしれません。本当に感謝しています。自分の甘い考えで3匹を危険な目に遭わせてしまったことは反省しています。もう仕事には連れて行きません」
帰宅後、茶々ちゃんはとても甘えん坊になったそうです。以前は“ツンツン”タイプで頭を触られると逃げたり、抱っこも苦手だったのに、今では自分から河村さんの膝に乗ってくるように。余程、怖い思いをし、耐えがたい空腹も味わったのでしょう。ペットを迷子にしない! 飼い主の責任として、肝に銘じたいものです。