「名駅裏の飲食店の裏で目の開いていない子猫を保護。どうすれば良いか?」
8月2日の夜、オリ猫シェルター(@ori_neko_coffee)代表で保護猫活動家の片木和博さんのところにこんな緊急連絡が入りました。目が開いていないとのことから、一人で運営しているシェルターでは受け入れが難しい授乳が必要な子猫のよう。そこで、仲間のミルクボランティアさん(ぱな保護猫活動さん、Xアカウント→@TPTR6R1kLFmPISp)に子猫を受け入れてもらえるか確認後、片木さんは名古屋市内の繁華街にある飲食店へ車で急行しました。
到着すると、たまたま通り掛かって子猫の子守りを買って出た人と連絡をしてくれた人たち二人と合流。連絡をした人は、SNSを通じて片木さんの活動を知っていたといいます。
二人に事情を聞いた片木さんはすぐに店のスタッフに子猫の発見時のことを尋ねました。「昨日店内の壁の中から鳴き声が聞こえ、今日壁をはがしてレスキューした」とのこと。子猫は生後3日ほどの赤ちゃん猫でした。元気に鳴いていましたが、子猫は急変しがちなので、急いでどこにいたのかを調査。子猫がいたという店内の壁を見てみると、猫が出入りできるような直径15センチほどの穴が二つ開いていました。入り組んでいて一見中がどうなっているのか分かりません。また壁の中から猫の鳴き声も物音も何も聞こえません。母猫は見たところいない様子でした。
「母猫は子猫を1匹置いたままどこかに引っ越したのか?」と片木さん。そんなことを考えながら、この日はミルクボランティアさんのところへ子猫を届けるため調査を中断しました。店のスタッフに猫の鳴き声が聞こえたら連絡をもらえるよう伝えて、その場を離れたといいます。
壁の中から2匹目の子猫が落ちてきた…壁の中で出産?
そして2日後、「壁の中から鳴き声が聞こえる」との連絡が片木さんのところに入り、再び現場へ。店のスタッフから詳細を聞くと「以前よりも高い、人の目線ほどの高さから聞こえた」とのこと。とはいえ、片木さんが到着した時には全く聞こえてきませんでした。鳴き声を聞いたのは確かとのこと。何とか助け出そうと、壁の中の構造を調べました。
すると、店のキッチン部分を増設するため店が入っているビルの横にプレハブを作り、それを隔てる壁の中の構造が大きな隙間になっていたことが分かったのです。さらに隙間には上側に広いスペースがあり、そこがちょうど人の目線ほどの高さでした。片木さんは「おそらく壁の隙間にあった広いスペースで母猫が出産をし、そこで子育てをしていたのではないか?」と推測。その広いスペースの下側に二つの穴があり、子猫が落下してきた可能性が高いといいます。「まるで自動販売機のような構造」と思ったという片木さん。この時、鳴き声が聞こえなくなったのは母猫がいて授乳させていたのかもしれないと、しばらくの間様子を見ることになったそうです。
お腹ポンポンの子猫…母猫は壁の中で子育て中?
しかし、事態は急展開。「昨夜の壁の中で鳴いていたと思われる子猫が落ちてきた」と、翌朝連絡が来たのです。既に店のスタッフが子猫をレスキュー。車で現場に到着すると、店の中から元気に鳴き叫ぶ子猫の声が…そのまま預かり、ミルクボランティアさんの所へ直行しました。子猫は布を掛けると安心したのか鳴き止み、フミフミを開始。また子猫をよく見るとお腹もいっぱいのよう。前足をくわえて、スヤスヤと眠ったそうです。
今回の子猫たちの保護について「母猫のネグレクトを心配しましたが、この子たちの体型やお腹のいっぱい具合を見ればちゃんと育てていることが分かりました。やはり壁の中に母猫がいるはずですし、まだ他にも子猫がいるに違いないと思います」と片木さん。さらに「繁華街に住む母猫はこんなにも過酷な子育てをしています。今後もこの小さな命を守るチームでこの壁の向こうの母猫と子猫をを助けてあげたい。そして、保護した2匹とも元気に大きくなってくれればと心から願っています」と話してくれました。