右目の光を失った保護犬は妊娠 生まれた子犬たちも障害 新人スタッフ「精一杯生きる姿に私が励まされます」

松田 義人 松田 義人

保護犬の譲渡活動を通じ、「殺処分ゼロ」の実現を目指すピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。同団体には、例年春に新人スタッフが入職することが多いですが、2022年春に検疫犬舎に、新しい仲間として若い女性が加わりました。小野さんは「小さい頃から動物が大好きだった」「1頭でも多くのワンコの命を救い、幸せへと導く手助けをしたかった」という理由からこの仕事を選んだそうです。

特に人馴れしていない保護犬のサポートをしたい

小野さんはそれまで動物看護師の専門学校に通い、点滴や投薬に関する知識、獣医師をサポートするための保定の仕方などについて学びました。「専門学校で学んだことが、保護されたワンコたちを救うことにつながるのであれば、この道に進んで本当に良かったと思う」と笑顔で語ります。

入職当初の小野さんの勤務内容は検疫犬舎の掃除、ワンコの食事の準備と給仕、ワンコの点滴や投薬などのケア、そしてワンコの散歩などでした。

ワンコたちの食事を準備する際は、給仕表を見て1頭1頭の状態に合わせた食事を用意していきます。保護されたワンコの中には、体調が悪い子や偏食傾向にある子、食が細い子などがいるため、一気にまとめて「ご飯食べて!」というわけにはいかず、様々な工夫が必要です。さらに検疫犬舎の中でお世話するワンコ全頭の顔と名前、食事の与え方を覚えなければなりません。「最初は覚えることが多くて大変でした」と小野さんはこの作業を振り返ります。

検疫犬舎は、心に深い傷を負っているワンコ、くくりわななどでけがをしたワンコ、妊娠しているワンコ、全く人馴れしていないワンコなど1頭ごとに事情を抱えています。特に元野犬の保護犬は、仲間とのコミュニケーションに長けている一方、人間には不馴れなワンコが多いものです。

小野さんは、これからもっともっと経験を積んでいき、こういった人馴れしていないワンコに対する処置の仕方を学んでいきたいとも語ってくれました。

右目が見えないナンシーと、その子犬たち

検疫犬舎に、小野さんが特に気にかけているナンシーというメスのワンコがいました。保護当時すでに人に馴れていたことから、元飼い主と離れ離れになったワンコだと思われました。

ナンシーは持病から右の目を失明していました。保護当時は妊娠しており、検疫犬舎で無事出産することができましたが、生まれた子犬たちは目と脳に障害があり、両目が見えない状態でした。そのためナンシーと子犬たちは特別な配慮が必要で、小野さんはナンシー一家を特に気にかけていました。

そんな小野さんの思いを感じ取っているのでしょうか。ナンシーは小野さんに絶対的な信頼を寄せているようにも見えます。ナンシーは自分の子ども達の世話を小野さんがしているのを見ても一切怒らないからです。小野さんがお世話をする子犬たちに「早く大きくなってね」と言わんばかりの優しい表情で見つめています。

「ナンシーと子犬たちの生きる姿に励まされる」

ナンシーは小野さんとの散歩も大好き。右目が見えないハンデはありますが、グングンと歩いていきます。また、好奇心旺盛でもあり、少しでも気になるものがあれば近づいて臭いをかいだりしています。

新人の小野さんですが、ナンシーと子犬たちと接することで、今何を感じているのかが少しずつ分かってくるようになったそうです。さらに、そのことが「仕事の楽しさ」につながっているといい、ナンシーと子犬たちが一生懸命生きる姿に励まされることも多々あります。

新人スタッフは覚えることが数多くあり、今後も乗り越えなければいけない壁がいくつも出てくると思います。壁を乗り越え続け、今後も多くのワンコの命を救うために尽力してほしいと思います。

ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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