日本で最初の営業用電車は、京都(京都電気鉄道)で開業しました。その後、関西の鉄道は「私鉄王国」とも呼ばれる独自の鉄道文化を築いてきましたが、そのなかには工事に着手したものの実現せず夢物語に終わった鉄道路線「未成線」も多くあるといいます。
株式会社LIFULL(東京都千代田区)が運営する情報サイト『LIFULL HOME'S』が2023年7月、京都府・大阪府・兵庫県在住の20~60代男女1100人を対象に「実現してほしかった未成線」についてアンケートを実施した結果、1位に選ばれたのは、大阪市中心部と関西空港が10分台で結ばれるとされた「関空リニア構想」でした。
▽実現してほしかった未成線ランキング(関西編)
【1位:関空リニア構想(393票)】
1位に選ばれたのは、大阪市中心部と関西国際空港をリニアモーターカーで結ぶ「関空リニア構想」。実現すれば、現在30分以上かかる大阪中心部と関西空港を10分台で結ぶとされていましたが、新たに関空アクセスを担う新線「なにわ筋線」の計画が進み、この構想が具体化することはありませんでした。
回答者からは、「空港の利用が遥かに便利になる」「海外から訪日した方に日本の技術をアピールできる」「関空専用路線で運用してもらえればアクシデントや事故による遅延が減りそう」などの声が寄せられました。
【2位:箕面有馬電気軌道(現:阪急電鉄)有馬線(345票)】
続く2位は、現在の阪急電鉄の前身・箕面有馬電気軌道が計画していた「箕面有馬電気軌道(現:阪急電鉄)有馬線」です。日本三古泉とのひとつ「有馬温泉」には、大阪から神戸または三田を経由してアクセスできますが、この路線が実現していたら、大阪から有馬温泉へ直線的にアクセスできていたことになります。
回答者からは、「有馬温泉は近いが、なかなか行きにくい」「宝塚方面からも行けると便利で需要がありそう」「既存路線は通勤色が強く観光気分にならない。新線に観光特急を走らせて欲しい」などの声が聞かれました。
【3位:阪急新大阪千里環状線(338票)】
3位には、北摂エリアを一周し新大阪駅へ向かう「阪急新大阪千里環状線」がランクイン。阪急宝塚本線や京都本線の混雑緩和や、新幹線が発着する新大阪駅へのアクセスを目的として計画されました。実現していれば、北摂エリアの東西方向の移動や、阪急沿線から新大阪駅へのアクセスが便利になっていたと考えられます。なお、既にほとんどの区間で鉄道の敷設に必要な免許が失効しているものの、一部区間の免許が維持されており、2031年に「新大阪連絡線」の開業を目指しています。
回答者からは、「ずっと十三から新大阪に行けたらいいのにと思っていた」「阪神間から新大阪駅に行く場合、かなり遠回りしている。阪急の計画では、移動時間を大きく短縮できる」「北摂地方では、それぞれの路線が繋がっていないので、繋がることのメリットが大きい」などの意見が寄せられました。
【4位:京阪梅田線(315票)】
4位は、「京阪梅田線」です。かつて大阪市中心部への乗り入れを目指していた京阪電車は、梅田への乗り入れを計画していました。実現していれば、大阪のベッドタウンである京阪沿線から、地下鉄に乗り換えることなく大阪の中心地・梅田へアクセスできていたことになります。
回答者からは、「今は淀屋橋駅で乗り換えが必要であり、徒歩でも中途半端な距離」「京阪電車から乗り換えなしで梅田まで行けるのは、とても魅力的」「大阪から京阪電車で京都に行きたい」などの声が寄せられました。
【5位:神戸市営地下鉄海岸線延伸(274票)】
5位は、新神戸からノエビアスタジアム神戸へ1本でいける「神戸市営地下鉄海岸線延伸」。2001年に開業した、神戸市の臨海部を結ぶ神戸市営地下鉄海岸線は、元々「新長田から和田岬、三宮を経て新神戸を結ぶ路線」として計画されていて、三宮・花時計前駅~新神戸駅が未成線となっています。実現していれば、山陽新幹線が通る新神戸駅とつながるため、県外からの出張やスポーツ観戦に便利だったかもしれません。
回答者からは、「現在の新神戸駅の利便性が飛躍的に高まる」「ノエビアスタジアム神戸に行く機会が多いから便利」「新神戸駅と大規模な工業地帯を結ぶ路線があると、ビジネスや通勤での利便性が向上すると思う」といった声が寄せられました。
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そのほか、大阪市南部の東西を繋ぐ「大阪市営地下鉄敷津長吉線」(6位)や西神ニュータウンと西明石駅を結ぶ「西明石・西神線」(7位)など、現在はバス移動や鉄道では遠回りが必要な箇所を繋げる路線や、滋賀の近江鉄道・信楽高原鐵道と京都の京田辺を繋ぐ「びわこ京阪奈線」(10位)といった、実現していれば大阪通勤圏を大きく広げていたかもしれない未成線がTOP10内にランクインしていました。