1986年式のヤマハFZ250フェーザー 北の大地をチェーン装着で疾走 ODOメーターは地球16周 

小嶋 あきら 小嶋 あきら

 バイクの寿命ってどれくらいなんだろう。バイク好きだったらそんなこと、一度は考えたことがあるんじゃないでしょうか。5万キロ、それとも10万キロ?そんな疑問を遙かに超えて、60万キロ以上走っていていまも現役という猛者をご紹介したいと思います。

ヤマハFZ250フェーザーに35年

 宝塚市出身で今は北海道在住の林さん。愛車は1986年式のヤマハFZ250、フェーザーと呼ばれる車種です。当時、世界初の250cc4気筒DOHC16バルブエンジンを搭載して、最高出力45馬力、レッドゾーンはなんと16000rpm(1分当たりの回転数)からという超高回転型のスポーツバイクでした。

 エンジンの「馬力」を稼ぐためには回転数を上げるのが一つの方法ですが、それを突き詰めたのがこのバイク。16000rpmというと、一般的な乗用車の2倍以上の回転数です。それだけたくさん回るわけですから、寿命は短くなりがち、と考えるのが普通です。

 林さんはこのバイクを1988年に手に入れました。特にこの車種に思い入れがあったというわけでもなく、走行1000kmほどで程度が良い割に安かったから、という理由だったのだそうです。ところが乗ってみるとこれが実にちょうど良くて気に入って、以来35年ずっと乗り続けています。

ライダーのパラダイス、北海道

 北海道というと、まさにバイク乗りのパラダイスです。かつてのバイクブームの頃は夏になると大勢のライダーが北海道に渡って、ブンブン走り回るということで「ミツバチ族」なんて呼ばれたり。その頃は筆者も毎年のように北海道ツーリングに出かけていました。とにかく信号が少なく、交通量もそう多くなく、夏でも涼しくて、なんといっても景色が雄大で素晴らしい。ただ普通に道を走るだけで夢見心地なんですね。さらにメロンもミルクも海産物も安くておいしい、ライダー向けに格安で過ごしやすい宿もたくさんある、そして同じようなライダーが全国から集まってくるので交流も楽しい。「バイク乗らない人って人生の半分ほど損してるんじゃないか」なんて、夏の北海道を走っているとついそんなことを考えてしまったものです。

 そんな北海道に住んでいる林さん。仕事が休みになると、ひたすらバイクで走り回ります。Facebookに投稿されている動画を拝見すると、富良野辺りを起点に日帰りで日本海とオホーツク海を見て帰ってくる680kmとか、そういう距離感のツーリングを毎週のようにされています。

 なので、バイクの距離計もものすごい勢いで回っていくことになります。

林さんに直撃インタビュー

 2023年7月のある日、法事のために弾丸スケジュールで宝塚の実家に戻ったタイミングで、林さんに会うことができました。今回は愛車のフェーザーで、フェリーを使っての帰省です。

 その時点で、距離計は実に640666.7kmを指していました。桁数の関係でフェーザーのメーターは99999kmまでしか表示できないので、つまりすでに6周しているということになります。なので10万の桁のところに手描きで「6」と記入されています。

 ただでさえ寿命の面で厳しいといわれる高回転型のエンジン、どうしてこんなに走ることができたのでしょうか。その辺りをご本人にうかがいました。

 「走行10万キロ辺りでオイル上がりの症状があって、ピストンリングを交換しています。そのあと40万キロくらいの時にミッションの先の軸がすり減って滑るようになって(筆者注・スプラインかな?)、エンジンごと積み替えました。以来特に大きな故障もなく今に至ります」

  なるほど、エンジンは2機目なんですね。いや、それにしてもこのエンジンで40万キロも持つのは驚異的です。何か日頃から特別気をつけていることはあるのでしょうか。

 「3000kmでしっかりオイル交換をするとか、ごく普通のことしかしていません。ただ、北海道という場所柄、さらにツーリングメインの使い方なので、あまりエンジンをぶん回すこともなく、一定の速さで大きな負荷がかからない使い方をしているから、ということはあるかもしれません」

 夏の北海道はまさにツーリングに最適な場所ですが、北の大地は冬の訪れが早く、また厳しいです。バイク乗りのシーズンはやはり短いです。そんな中でも林さんは、秋はギリギリまで乗って春は一番に乗り始められます。なので、ツーリングシーズンと雪の季節が少しオーバーラップしてしまうことがあります。北海道で暮らして長い、いわば冬のベテランですから、もちろん無理はされません。しかしその「ここまでは大丈夫」の範囲が道外の私たちとは違います。

 

 今ではもう見かけることも少なくなった、立派な旧車のヤマハ・フェーザー。それが前後にチェーンを装着して雪上を走る姿、これはもう絶対に二度見してしまいますよね。

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