2005年に近畿大学にて役者、舞台芸術を専攻し、役者やダンサーを目指していた学生たちが集まり結成されたダンスカンパニー「男肉 du Soleil」。
京都を中心に活動している彼らは、上半身裸のジーンズ姿で汗を飛び散らしながら、肉体と顔をフルに活かして踊り、表現している。そんなカンパニーは、近年の著作権、肖像権がうるさい中にもかかわらず、上演中、写真撮影のみならず、その写真を即SNS発信OKという大胆な試みを毎公演行っている。まもなく東京公演を控える池浦毅団長に話を聞いた。
ーー「男肉 du Soleil」という名前がまずインパクトがありますね。
池浦:大学時代、学祭でダンスのオムニバス舞台に出ることになった時に、そういや周りは劇団を結構立ち上げてるけど、ダンスカンパニーはなかったなって思って、立ち上げたんです。名前は舞台に出る前日にシルク・ド・ソレイユの「キダム」のDVDを見ててすごくリスペクトして、じゃ、似た感じの名前がいいなぁって考えてる時に僕らのユニットは男しかいない、そして肉体を使うパフォーマンスだから男肉と書いて「おにく」って呼ぶことにして、理想としてはサーカスのようなカンパニーになれたらって思って名づけました。ただ、ネーミング的にはシルクを残すべきだったんですけど、当時はサーカスだってこと知らなくて(笑)。だからせめて僕は団長と名乗ろうと。
――舞台では基本、上半身裸にジーンズ姿で芝居であったり、ダンスを繰り広げてますがそれは最初からですか?
池浦:大学の時は演劇専攻だったんで衣装室があったんです。そこで適当に引っ張ってきてやったんですが、ダンスを見せる時には、やはり服がない方が映えるので裸がいいかということで、すぐに裸にジーンズになりました。その頃、ちょうどブラッド・ピットがエドウィンのCMに出ててカッコ良かったし、なんせジーンズは生地が強いしで。ただ、メンバーの城之内ゴローだけはバレエで着るようなピチッとしたベロアの衣装を毎回着ていますが。
――新作「サバイバルヘッズDX」は、船が遭難し、無人島生活を余儀なくされる男たちを描き、その中にゲーム、漫画、アニメのポップカルチャーにHIPHOP、さらにそこへ投資という生々しいテーマが織り込まれています。これまでの舞台でもポップカルチャー、サブカルチャーがふんだんに取り込まれてきていますが、これは団長のこだわりですか?
池浦:そうですね。小さい頃から自分が影響受けたものが当然舞台に反映されてます。毎回、3つくらいのテーマをメンバーにプレゼンして多数決で決めて現場で作ってます。今回は僕が「十五少年漂流記」をはじめとした、無人島サバイバルものが好きだったんですね。基本はこれで、あとは自分の好きなカルチャーをひたすら詰め込みたくて…。
僕はユニバーサル・スタジオ・ジャパンという在り方が最高に好きなんですけど、いい意味で節操がないじゃないですか。最初は洋画をコンセプトにアトラクションを展開していたのに、ある時から日本のあらゆるポップカルチャーをガンガン取り入れて、あの手この手で戦ってる。「最初のコンセプトどこに行った?」なんてもう言わせない。内外から来るお客さん、喜んではるでしょと。それを男肉 du Soleilも見習いたいなって思って、毎回、いろんなことを詰め込んでるんです。
――毎回、肉体をフルに使ったダンスに圧倒されます。
池浦:振り付けは僕が基本的に芝居部分同様に口立て(台本に書かず、口伝えで話を作っていくこと)で行ってます。それをメンバーの江坂一平が実際に動いて付けていきます。ま、モーリス・ベジャールと同じスタイルですね(笑)。
今作では、後半約20分を30代、40代のおっさんたちが踊り続けてます。ただただ体が疲労してく様を見せていってる感じで、線香花火やろうそくの最後の灯火がファッと消える寸前を感じて欲しくて(笑)。でも不思議なもんで、お客さんの手拍子があると、なんかわかりませんけどアドレナリンが出るんでしょうね、ちょっと頑張れたりするんで面白いです。
――そんな舞台の模様を写真撮影OK、SNSでの発信もOKにしたのは?
池浦:実は最初からなんです。初期の頃は飲食も可能にしてたんですよ。客席に屋台を作ってフランクフルトとビール売ってましたから(笑)。
僕らはセットがなく、基本的には素舞台状態なので、いわゆるネタバレすることがないということと、太っている自分も含めて、キャラの強い上半身裸の男たちが集団で踊ってる姿って単純に写真撮りたいやろうなぁっていう気持ちからですね。そして例えば舞台って見てたら上演時間の半分近く集中できなくなる時間があると思うんですよ。僕らの舞台なんてずっと集中されて見られたら、めっちゃ粗が見えるはずなんですよ。それを撮影OKにすれば、スマホやカメラのレンズを通していい場面を撮影しようとして見てくれはるじゃないですか。それを狙ってたりします(笑)。
ただ公演中のSNS発信をOKにしているものの、やはり少ないですね。見ながらツイートしたりするってのは至難の業なのかなと。でもしていただいたら、僕はそんなに出番がないので、すぐリツートしたりコメント入れたりするんですけど。だからちょっとハードルを下げて、見終わってから公演中に撮影していただいたベストをツイートしてくださいってのをお願いしてますね(※「#男肉」で見ることができます)。よく、チラシやチケットを撮影して載せてはりますけど、そんな画像よりも実際の公演中の写真の方が楽しいじゃないですか。僕らにとっては宣伝にもなりますし、何より公演中にSNSでコミュニケーションを取れるって、新しい楽しみ方でもあると思うんです。そういう意味では堅くない集団としてこれからもまもなく始まる東京公演でも、見にこられる方にはバンバン写真を撮って、ガンガン発信していただけたらと思います。もし差し入れいただけたら、劇中でいただく試みもさせていただきます(笑)。
――これからの男肉 du Soleilはどういう展開を?
池浦:踊れる限界までは踊っていたいし、シンプルでアホなことを織りこんでいきたいです。再来年の2025年には結成20周年を迎えるんです。ちょうどその年は関西万博が開催されるので、僕らもそれに乗っかって「男肉万博」をやりたいなと思ってます。多様性の塊のような集団芸を繰り広げたいですね。もちろん、その時も写真撮影、SNS発信はOKですんで。
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大長編男肉 du Soleil「サバイバルヘッズ DX~夢を見過ぎた島~」
東京公演
7月14日(金)19:30
7月15日(土)13:00/18:00
7月16日(日)13:00
会場/小劇場B1(東京都世田谷区下北沢2-8-18 北沢タウンホールB1)
チケット/一般前売3800円 当日4300円
学生前売2000円 当日2300円
問い合わせ/odsticket029@gmail.com
男肉 du Soleil公式サイト:https://oniku-du-soleil.boy.jp/