愛知県を拠点に動物を保護する一般社団法人SORA小さな命を救う会(以下、SORA)。2022年末、SORAに1本の連絡が入りました。
とある高齢者の家で飼われているワンコの話でした。名前はるったん。飼い主の高齢者は重度の認知症で、デイサービスのサービスを受けていたそうです。しかし、そのワンコがデイサービスの職員さんを次々に噛んでしまい大問題に。困り果てた家族が「なんとかならないものか」と地元の動物愛護センターに相談しました。
愛護センター職員が、飼い主家族に伝えたSORAの存在
「何度も噛む」という話を聞いた動物愛護センターの職員は「噛傷犬ということなので、残念だけれど、殺処分対象になるかもしれない」と家族に告げました。
複雑な事情を抱えつつも、家族は「るったんの命を助けたい」と願っていました。それを明かすと、職員は家族にSORAを紹介したのです。話を聞いたSORAのスタッフは、るったんを引き取ることを決意。家族の車の中で、るったんと会うことになりました。
初めて会うスタッフではなく、家族に向かって唸っていた
スタッフが初めて会った際、るったんはブルブルと震えながら家族に向かって唸っていました。スタッフはるったんの気持ちにしっかり寄り添うために、家族からるったんの普段の様子について話を聞き出しました。その後手続きを終えて、SORAで正式に引き取ることにしたわけですが、ここで驚くべきことが起こりました。
「何度も噛む」「手に負えない」と言われていたるったんですが、SORAのスタッフが試しに手からおやつをあげるとそのまま食べてくれます。また、家族にはあれだけ唸っていたのに、スタッフには助けを求めるような素振りも見せました。
スタッフが「大丈夫だよ。怖くないからね」と声をかけながら抱っこすると、るったんは安心感からかスヤスヤ眠ってしまいました。
幸せな日々の中で、突然倒れてしまったるったん
スタッフはるったんがすぐに心を開いてくれたことに胸をなでおろしましたが、ほっとしたのも束の間、積み重なったストレスからでしょうか、数日後にかるったんが倒れてしまいました。
すぐに動物病院で検査したところ、膵炎を患っており、さらには副腎腫瘍も見つかりました。状態が悪くるったんが危篤状態に。数日経っても好転することはなく、獣医によれば「助かる確率は50%」とのこと。大きな負担をかける手術を受けさせるべきか、スタッフは悩みましたが、ある決断を下しました。
それは「退院という選択」でした。もうすぐクリスマスイブを迎えようとする時期。大きな負担ががかる手術を受けさせるのは心苦しく、それよりも暖かい家の中で、ゆっくり過ごしてほしいと思ったからです。
危篤から一転。奇跡的な回復を見せてくれた
退院させ、家の中でできる限りのケアを続けたスタッフ。その思いが通じたのか、奇跡的に回復を見せてくれるようになりました。
現在も通院を続けていますが、一時は口にしてくれなかったご飯も食べられるようになりました。そして、今も変わらず、保護前に聞いていたような「噛みつく」「暴れる」といった行動もありません。
もしかしたら、るったんはSORAのスタッフとの出会い、そしてスタッフの愛情をたっぷり受けて過ごす生活を、長い時間をかけてずっと待っていたようにも思います。だからこそるったんは、一時危篤となっても自らの命も繋ぐことができたように思えてなりません。
るったんの病気の治療は容易いものではありません。しかし、るったんが時折見せてくれる笑顔を前に、スタッフは「るったんと一緒に最後まで諦めずにがんばっていこう」と胸に誓いました。
一般社団法人SORA小さな命を救う会 インスタグラム
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