“難病”が発覚…でも、「ラッキーな子」という言葉に救われた 心疾患「ファロー四徴症」と生きる元保護猫

古川 諭香 古川 諭香

「ファロー四徴症」は人間の場合、指定難病とされている先天性心疾患。その病気と付き合いながら、2匹の同居猫と共に賑やかな日々を送っているのが元保護猫のれいたくん。人間好きなれいたくんは、飼い主さんからたっぷり愛情を注がれ、ニャン生を謳歌しています。

お迎え後に「ファロー四徴症」が判明

ある日、飼い主さんの目に留まったのは、とある保護猫カフェがTwitterで配信していた里親募集の記事。その記事では、心雑音がある保護猫れいたくんが紹介されていました。

「保護された後、一度発作が起きて、カフェの方が病院に連れて行ったら、右心房と左心房の間の壁に穴が開いている、心房中隔欠損症の疑いがあると診断されたようでした。その時の医師からは、1歳を迎えられるかどうか…という厳しい言葉も出たそうです」

れいたくんのことが気になった飼い主さんは、お店に足を運び、対面。れいたくんは心疾患を持っているため、他の猫と比べて、鼓動が速く、舌の色が薄かったそう。

泣きそうになりながら、れいたくんのことを話す猫カフェの店員さんの姿を見て、飼い主さんは病気も含め、この子を受け入れようと決意し、家族に迎えました。

人間と同様に、猫の心房中隔欠損症も成長過程で塞がる可能性があるため、飼い主さんは希望を抱いていました。それに、もし塞がらないになかったとしても、手術をすれば元気になるだろう。そう考え、改めて、しっかり心臓を見てもらうため、お迎え後、専門病院へ。

すると、発覚したのはファロー四徴症であるという辛い現実でした。

ファロー四徴症とは、「心室中隔欠損症」、「肺動脈狭窄」、「右心室肥大」「大動脈騎乗」、という4つの異常が心臓にみられる先天性心疾患。通常とは異なる血液循環のため、酸素が少ない血液が体を巡り、酸素が欠乏している状態に。運動するとすぐに疲れる、息切れしやすいなどといった症状がみられます。

「職業柄、少し知識があったので、狭い血管を広げるためにステントを埋め込む、ステント留置術ができないか聞いたのですが、血管が細すぎて無理でした」

予想していたよりも厳しい現実を突きつけられた飼い主さんは、この子に何もしてやれないのか…と大きなショックを受け、放心状態に。

しかし、医師から「この疾患を持つ子が6カ月生きられたことはラッキーだし、発作を起こした時にちゃんと病院へ連れて行ってくれる場所に保護してもらえたことや、心疾患があると分かっても病院で原因を突き止めようとしてくれる人に出会えたこともラッキー。この子は本当に、ラッキーな子」と言ってもらえ、心境が変化。

「先生は、3年までが勝負で、上手く病気と付き合い、8年生きた猫も知っていると教えてくださいました。だから、こんなにもラッキーな子なんだから、きっと長生きしてくれる…と前を向くことができたんです」

誰かにとっては障害でも、私たちにとっては障害ではない

現在、れいたくんは薬を服用しながら、2カ月に1度、麻酔科・循環器科の専門医が隔週で来てくれる自宅近くの病院に通院。超音波検査で心臓の動きや肺動脈への血液の速度をチェックしてもらい、血液検査で赤血球の量を診てもらって、多血症の発症を予防しています。

おうちでは、基本的には好きなように過ごしてもらっていますが、チアノーゼがあり、すぐに息があがってしまうため、遊ばせすぎないように配慮。先住猫と喧嘩して怪我をしないようにも気をつけています。

「心臓の負担となり、去勢手術も難しいので、同居猫には避妊手術を受けてもらい、発情期のシーズンには野良猫の声や匂いに反応することを防ぐため、極力窓を開けないようにして発情させないようにもしていますね」

時には、朝起きて異変が起きていたらどうしよう…と、不安に駆られることも。

「でも、普段は元気なので、れいたんのことをあまり特別だとは思っていません。誰かにとっては障害でも、私たちにとっては障害ではないんです」

そう語る飼い主さんは一緒に過ごす中で、れいたくんの愛くるしさをたくさん目にしてきました。

「ご飯を食べている時のハフハフ音がかわいいです。一生懸命食べてるなあと、愛おしくなります。あと、寝相がユニークなので撮りたいのですが、いつも気付かれてしまい、撮影できません(笑)」

我が家の猫たちは、自分たち夫婦にとってかけがえのない我が子。幸せの化身のようにも思える――。そんな言葉を小さな家族たちに向ける飼い主さんは、同じ病気を持つ猫の飼い主さんと繋がりたいと願いながら、愛猫のファロー四徴症と向き合っている方たちに温かいエールを贈ります。

「ファロー四徴症の猫ちゃんが、18歳まで生きたという記事を過去に見たことがあります。一緒に20歳を目指しましょう!」

1歳まで生きられないかもしれないと、厳しい余命宣告をされていたれいたくんは今日も、心から自分を愛してくれる飼い主さんの隣で幸せを味わっています。

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