図書カードがエラーで使えず…がっかりした小学生 本屋の店主「対処方法あります」の投稿に「覚えておきます!」「捨てずに持っててよかった」

谷町 邦子 谷町 邦子

ある書店でエラーのため使えないと言われ、磁気式の「図書カード」を持って来店した子ども…そのときの本屋の店主の投稿が話題に。状況を店主に、「図書カード」について日本図書普及にたずねました。

「走る本屋さん 高久書店」(静岡県掛川市)の店主・高木さんは、対応した店員が新人だったので適切な対処方法を知らなかったのかもしれないと考え、がっかりしていた子どもに「ごめんね」と謝った上で、どうすればいいのかを伝えてあげました。そして、Twitterで「読み取れなくなった磁気式の図書カードが交換できる」方法について投稿しました。

そんな高木さんの温かな対応に対して、「こどもにとって500円分失うのも大きいし、断られて物を買うのが怖くなっちゃう子もいると思います。丁寧な説明と交換できること、前の書店員さんの不備の補足をしてくださりありがとうございました。素晴らしい対応ですね」「紙のも旧カードも財布に入りっぱなしだw 子供は買えなくてショックを受けただろうけど素敵な対応でほっこりしました」というコメントが寄せられました。

また、「新しいカードに交換してくれるなんて知りませんでした。以前小学生の娘と本を買うために書店に行きカードを出したら『使えないのでお店で棄てておきます』って言われて半泣きで戻って来た事があります。慌ててカード返して貰いに行って違うレジで私が出したら無事に使えた事があり驚いた事があります」「この前エラーが出たからお店の方に『もう使えません』と突き返されたばかり。捨てずに持っててよかった」と、同様に書店の店員さんが正しく対処してくれなかったという事例も。

20年以上勤務した大手チェーンの書店を退職し、2020年に高久書店をオープンした高木久直さんに、磁気式の「図書カード」が読み取れなくなった場合について、お話を聞きました。

「書店や出版業界が当たり前だと思っていることが伝わっていない」

高木さんによると、今回のような磁気式の「図書カード」が読み取れないと来店するお客さんは高久書店開店以来ほとんどおらず、一方、大手の書店で働いていた頃は年に数件あったそうです。その際は、エラーが出たことを証明するレシートと、日本図書普及宛の「読み取りエラー専用封筒」を渡し、お客さん側からカードとともに封筒に入れて送ると、同じ分だけ残金が入った「図書カード」と交換してもらえることを伝えていました。

「磁気式のカードは強い磁気を帯びたものなどの近くに置いたりすると磁気が壊れ、エラーが出るんです。表面が汚れていて読み取れなくなっていたこともありました」と、磁気式の「図書カード」が主流だった頃は、書店員にとって交換方法は常識でした。

しかし、磁気式のカードの発行が2016年に終わり、二次元コードに切り替わったことで、対応する機会も減り、だんだん知らない販売員が増えてしまったと推測する高木さん。またアルバイトとして仕事を始めたばかりの新人が多い5月だったこともあり、ベテランの販売員が近くにいなかった状況であったとも考えられると言います。

「管理不十分のためか、エラーになる図書カードもあり、今まで使用を諦めてました」「本大好きな娘、誕生日、クリスマス、入学祝などお金ではなく図書カードを頂いていて、沢山カードの貯えがあるので、これ覚えておきます!」など、カードが交換可能だと知らなかった人から、感謝の言葉がたくさん高木さんに寄せられました。

ツイートに大きな反響があったことについて、書店や出版業界では当たり前の磁気式図書カードの発行終了や交換方法が、一般にはほとんど知られていないことに驚いたそう。投稿を見て、実際に高久書店まで磁気式のカードを持って来店したお客さんも2人おり、「書店や出版業界が当然だと思っていることが伝わっていなかった。もっとツイッターなどで伝えなければ、もっとアナウンスしなければと思った」と話してくれました。

「今の時代、本はネットでも買えるけれど、リアルの書店ではネットにはないコミュニケーションがあります。もし、近くに本屋さんがあれば行ってほしい」と、高木さん。全国の自治体の3割には書店がなく、高木さんは2016年から「走る本屋さん」としてワゴン車で静岡県内の書店のない町に新刊書籍を販売する取り組みを行っています。

また、掛川に住む大人が、毎月1人本を10冊セレクトし購入、中高生に1人1冊プレゼントする「ペイフォワード(恩送り)」プロジェクトにも取り組んでいます。

今も磁気式の「図書カード」使用は可能です

図書カードを発行している「日本図書普及」(東京都新宿区)によると交換にかかる期間は約2週間ほど。しかし、エラーが発生した場合は、書店がその場で説明し対応しているため、電話やメールでの問い合わせはほとんどないそう。新しい二次元コードタイプのカードへの移行も進み、エラーカードの送付自体も年々減ってきているとのことです。

2016年に磁気式の「図書カード」からQRコード式の「図書カードNEXT」に変わった経緯について訊ねると、時代の変化により磁気式タイプの仕様を採用していたプリペイドカード自体が急激に減ったことが大きなきっかけとなっているようです。

それにともない新しいシステムへの早期の移行に取り組むことに。そこで、オンラインでの利用も可能なQR方式に変えることで図書カードの利便性を向上させたのです。「図書カードNEXT」はオンライン書店での決済だけでなく、「図書カードネットギフト」としてメールやSNSなど、ネットで送れるようになり、さらに、カード裏面のID、PINコードから残金や利用履歴の確認が可能なるという、これまでにない機能が搭載されるようになりました。

今も磁気式カードが使用可能ですが、「磁気式カードは発行終了から一定期間経っておりますので、お客様がもう使えなくなったと思い込んでいる可能性もあり、ぜひ書店で有効活用いただきたい」と、2023年7月17日(月・祝)まで「磁気式図書カード発掘キャンペーン」を実施。書店で磁気式の「図書カード」を使って買い物をした時の合計金額がわかるレシートと図書カードのレシートを用意し、キャンペーンサイトの応募フォームに必要事項を入力すると、「図書カードNEXT」のネットギフトが抽選で合計2000名に当たります。

◇  ◇

QRコードに「進化」することでオンラインでの決済可能、「ネットギフト」としてメールやSNSなどで送れるなど、インターネットが普及した社会に適応した形でより便利になった「図書カード」。時や場所を選ばず利用できるようになったとも言えます。とは言え、磁気式の「図書カード」を使ったり、店員とコミュニケーションをとったりできるのは実店舗の書店だけ。中古書店では「図書カード」が利用できないので、「図書カードNEXT」公式サイトの「取扱店検索」から地元の書店について確認してから足を運ぶのが良いでしょう。

■走る本屋さん 高久書店のTwitter https://twitter.com/books_takaku 
■走る本屋さん 高久書店 公式ホームページ https://sites.google.com/view/books-takaku
■走る本屋さん 高久書店 note https://note.com/books_takaku
■走る本屋さん 高久書店が運営する「本」のネットショップ  https://bookstakaku.thebase.in/
■「図書カードNEXT」公式ホームページ  https://www.toshocard.com/
■「磁気式図書カード発掘キャンペーン」キャンペーンサイト https://www.jpic.or.jp/toshocard-cp/

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