ケージの隅で怯えていた猫をお迎え 部屋が廊下になった飼い主、少しずつ距離を縮めたら→おしゃべりな甘えん坊に

渡辺 陽 渡辺 陽

怯えた猫「置物ですのでおかまいなく」

心福(こふく)ちゃん(推定1歳半・メス)は、住宅地で母猫と兄妹、さらに母猫が産んだ子猫3匹、計7匹で一緒に暮らしていた。当時ごはんをあげていた人が、猫の安全を考えて保護団体に連絡してくれたため、みんな無事に保護されたという。

関東に住むKさんは猫動画を見て癒されていたが、様々な動画を見ているうちに、保護活動をしている人たちの投稿をたくさん目にするようになった。
「外で懸命に生きていたり、捨てられたり、殺処分されたりする猫のことを知り、少しでも幸せを感じてもらえるよう、保護猫を迎えたいと思いました」

2022年4月、心福ちゃんが保護施設にきてから数日後、Kさんは施設を訪れた。70〜80匹の猫がいて、なかなか決められずに4時間ほど経った。

「心福は保護されて間もなかったため、大きなケージの中にいました。他の猫はそれぞれくつろいでいたのですが、心福は隅っこのほうでかちんこちんに固まっていました。まるで『私は置物ですので、おかまいなく』と言っているようでした。とにかく怯えていたのが印象に残っています」

Kさんはその姿を見て、「これからの猫生、リラックスして楽しく過ごしてほしい」と思い、お迎えを決めたという。

飼い主の部屋は廊下になった

5月、Kさんは心福ちゃんを迎えた。名前は、幸せいっぱいの猫生を過ごしてもらえるように「心福」と名付けた。

初日は怖がって、ケージの中にセットした猫ベッドの後ろに入って固まっていた。まずは落ち着いてもらおうと、Kさんは部屋を出て、廊下やお風呂場で過ごした。部屋が1Kだったので、そうするしかなかった。心福ちゃんは、2日目の朝になってもごはんや水に一切手をつけず、トイレもしなかった。

「私はできるだけ部屋に入らず、廊下で寝るようにしました。すると2日目の夜、初めてトイレをしてくれて、ごはんも少し食べてくれました。心福の体調が心配だったので、安堵で泣きそうなほど嬉しかったことを覚えています」

Kさんは心福ちゃんに新しい場所に慣れてもらい、健康でいてもらうことを最優先にした。
「私の部屋は廊下になりました。私が部屋に入ろうとすると、心福は猛ダッシュでソファの裏に逃げ込みました。扉越しに話しかけたり、扉下からおもちゃを入れて遊んでみたりして、少しずつ距離を近付けました」

Kさんは、野良猫時代より不幸な気持ちにさせてはいけないと思い、最初はとても不安だった。しかし、心福ちゃんはとても甘えん坊の猫になった。Kさんは、今、嬉しい気持ちでいっぱいなのだという。

おしゃべりな甘えたさん

心福ちゃんは、とにかくよくしゃべる。朝は、小さめの声でしゃべり、起きたら高い声で2、3言しゃべる。その後、「にゃーん」と鳴きながら、駆け足でKさんのところまで一直線でやってくるという。まるで目覚まし時計のようだ。

Kさんが忙しくてすぐに撫でてあげられない時は、歌をうたっているのかと思うくらいいろんな鳴き方をする。心福ちゃんなりにKさんの気を引く工夫しているのだ。
「こんなにも信頼してくれるようになって嬉しいのですが、もう少し自立してもらわないといけないと思います。最近は心福のストレスにならない程度に1匹でいる練習をしています」

心福ちゃんを迎える前、休みの日は基本的に出かけていたKさん。今は極力家にいて、飲み会があっても1次会だけで帰宅するという。

「心福と少しでも一緒にいたいんです。でも、家にいる時間が長いのに毎日寝不足です。心福は毎日深夜1時半くらいまで遊んで、朝も5時前後に起床。私は心福アラームで起き、大運動会に必ず参加させられます。だけど、私の幸せ度数は間違いなく爆上がりしました。幸せな猫生だったなと思ってもらえるように、これからもお世話係とボール投げ係を頑張ります」

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