「きゃうきゃう」と助けを求めてきた猫
ミミちゃん(16歳・メス)は、2013年5月に愛知県在住のNさんに保護された。出会いは2011年の冬。Nさんは仕事の帰り、家の近くで突然「きゃうきゃう」という小柄なキジトラ猫に声をかけられた。
その翌日は仕事帰りに、同じ場所で同じように声をかけられ、ごはんをあげたという。数日後、猫は家までついてきた。その子がミミちゃんだった。
「そのまま家に入れてあげようとしましたが、当時我が家にいた三毛猫に見つかって追い出されてしまいました」
一家離散で置き去りに
それからミミちゃんはNさん宅の裏庭の物置小屋を住処にしていたが、たまに三毛猫の目を盗んで家に上げていた。
「家に入れると、彼女はとてもリラックスして、イビキをかいて眠っていました。しかし、三毛猫に見つかって追い出されることもしばしばありました。そんな日々が2年続きましたが、ミミがオス猫に追いかけ回されてしばらく帰ってこないこともあり、かわいそうに思い、三毛猫と住み分ければ何とかなるだろうと、ミミを保護することに決めました」
健康診断のために病院に連れて行くと、避妊手術の跡はあるものの、耳のカットはされていなかった。また、人に慣れている様子から、もともとは飼い猫だったのではないかと獣医師は説明した。
「小柄な体格で、まだ若い猫だと思っていたのでショックでした。カルテには7歳と書かれていました。ミミがそんなに年をとっていたと知り、驚きました」
ミミちゃんがNさんに助けを求めたのは、ミミちゃんがもともと飼い猫だったからなのかもしれない。後に新聞配達員から聞いた話によると、ミミちゃんは飼い猫で可愛がられていたが、一家が離散した時に置いていかれたのだという。
ミミという名前は彼女の鳴き声にちなんでつけた。最初はミーミーと呼んでいたそうだ。
運命の出会いと別れ
ミミちゃんはとても賢く、おとなしい性格だった。人が言っていることをよく理解し、甘えん坊で寂しがり屋だったという。
「家族の中でも特に私に懐いていて、私が1泊の旅行に行った時、家族が代わりに世話をしてくれましたが、体調を崩して病院に通うほどでした。ミミは家にいる時でも寝る時もご飯を食べる時も、いつも私のそばにいることが多かったです」
ミミちゃんが10歳の時、慢性腎不全が発覚。それからは月に2回の点滴治療を受けながら何とか状態を安定させていた。しかし、ミミちゃんの調子は14歳頃から悪化し始め、真夏や真冬に体調を崩すようになり、16歳の5月、私がソレアとブレリアという猫を保護した直後から弱っていきました。食事も摂れなくなり、毎日自宅で点滴をする介護生活が始まった。
そして、2022年6月28日にミミちゃんは天に旅立った。
「ミミが亡くなる前の夜、彼女は苦しみながらも私を見上げ『きゃ〜う』と鳴きました。私はその鳴き声が彼女の別れの言葉だったのだと感じました。翌朝、彼女は意識が混濁しました。私は仕事を休むことができなかったので家族にお願いして、ミミには私が帰るまで待っていてほしいと伝えました。しかし、間に合わず、家族に看取られて逝きました。おそらく彼女は最後の瞬間を見せたくなかったのだと思います」
Nさんは、あの冬の夜ミミちゃんに呼び止められた時、何か運命を感じたという。
「ミミも『この人なら助けてくれる』と運命を感じたのかもしれません。彼女は不思議な縁を感じさせる存在でした」