「君の顔を見たくない人がたくさんいる」職場に届く嫌がらせ葉書でパニック障害に→送り主は名誉毀損罪も【弁護士に聞いた】

山脇 未菜美 山脇 未菜美

「窓際族・月給泥棒」「能無しの〇〇君よ 二度と職場に来るな」(〇〇は本名)―。そんな文言を印刷した嫌がらせのはがきが昨年、神戸市内の神戸大学附属病院に勤める男性職員(61)に送られてきた。はがきは全3通で、送り主は不明。男性は仕事を巡る同僚の言動をきっかけに体調を崩し、休職中という。もし、送り主が特定されて刑事事件になった場合、どのような法律に抵触するのだろうか。弁護士は「仕事にやる気のない人物のような事実を示して社会的地位を下げたという意味では、名誉棄損罪や侮辱罪に当たり得ます」とし、ほかの罪に当たる可能性もあるという。男性は近日中、警察に被害届を提出する予定。

男性は、国立大学法人神戸大学の法人職員。60歳で定年退職し、2021年から再雇用で医療支援課の課長になった。だが、職場での人間関係に悩み、昨年4月から休職と復帰を繰り返していた。はがきは消印が全て病院から1キロ以内の郵便局で、昨年5月15日、8月15日、9月25日。全て宛て先は病院の住所で、「医療支援課 課長」で、本名も記されていた。うち2通は文面が保護シールで隠されていた。男性はその後、パニック障害とうつ病を発症。現在は休職中で、課長職は外されている。

「労働する自由を奪うことに」

 Authense (オーセンス)法律事務所大阪オフィスの三津谷周平弁護士によると、名誉棄損罪と侮辱罪以外に考えられるのが、脅迫罪と強要未遂罪。「二度と職場に来るな」「早く退職しろ 顔を見るのが鬱陶しい」などの文言は、労働する自由を奪われる、そう考えてもおかしくない文言にあたるという。強要罪は、脅迫した上で義務のないことをさせれば成立するため、「会社を辞めてしまったのであれば、未遂ではなく強要罪になり得ます」と話す。また、公衆に著しく迷惑をかける行為に当たるとして、兵庫県の迷惑防止条例違反になることも考えられるという。

一方で、もし同僚の言動についてパワハラを立証するのであれば、何がパワハラに当たるのか、事実の特定が必要になるという。「言った、言わない、の言い分が食い違うことも多いので、いつ、どこで、誰が、誰に、何を言ったか―といった事実を証拠で立証する必要があります」と三津谷弁護士。証拠としては、加害者の自白のほか、録音・録画、医師による診療録、日時を記録したメモや手帳、第三者の供述などが考えられるとする。「この中でも特に、録音や動画が証拠として有効性が高くなりますね」と話した。

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