言葉やビザ申請の壁が…40歳目前での挑戦 念願のパン屋をフランスで実現した女性「諦めないでここまで来れて良かった」

塩屋 薫 塩屋 薫

「フランス・アンジェで、自身のパン屋をスタートできる事になりました! 長年の目標を1つ達成できたけどこれはただのスタートに過ぎず、ここからが本番です(毎日)」と投稿したのは、フランス在住のパン職人・成澤芽衣さん(@meinarusawa)。SNSで応援の声が寄せられています。開業にいたるまでの話を教えてもらいました。

20歳の頃からパン職人として修業し、2016年フランスのアルザスを訪れ、パン屋でアルバイトしながら大学に通った成澤さん。バゲットコンクールに出品するために練習を繰り返すなかで、独立している人も多い30代とあって、「日々意味あるのかと自問自答しながらとにかく朝から晩までフル活動してその事だけに集中してた気がする」とTwitterで綴っています。

そんな彼女の1年に渡る努力は、2017年にバゲットコンクール(Meilleure baguette de France)で1位受賞という結果で報われます。そんな栄光を手に共同経営で店をはじめたものの挫折し、日本への帰国を考えたことも。楽しいことも辛いこともあったなかで、心は揺れ動きつつも最終的には「やっぱりフランスが好きで、フランスのパンが好きで、フランスパン文化の一部になれてる日々が大好きで、諦めないでここまで来れて良かった」という思いにたどりついたそう。

そんな彼女の歩みに対して、「私もシェフになりたかったから。フランス行ったら、絶対に買いに行きます!」「催事で成澤さんのパンに出会ってからフォローさせていただいています。いつかまたおいしいパンを食べられる日を楽しみにしています」「おめでとうございます!三越での販売で食し、非常に美味しかったです」と日本のファンからも応援の声が寄せられました。

フランスと日本、人気パンの違いとは?

今年40歳を迎える成澤さんが、3月7日に開業した念願のお店「ブーランジュリー・コルネイユ」があるのは、フランス西部のロワール地方・アンジェ。地方都市でお店を構えた理由は、大都会にはない自然と食の豊かさ、人々の温かさに惹かれたから。そして、この地方にはたくさんの小さな製粉会社があり、「地元の食材でパンを作る事が夢」だったからだそう。

――実際にオープンしてみて、地元の方などお客さんの反応はいかがですか?

元々は従業員として働いていた時のオーナーさんから買い取らせて頂いたお店を、自分で会社を立ち上げて再オープンしました。なので尊敬する前オーナーのパンも続けつつ、自分の新商品も出している状態で、お客さまや元々の常連さんからも反応は良いように感じています。

――お店での1番人気のパンは?

フランス全土、どのブーランジュリーでも1番売れるのは、やはりバゲットですね。

――フランスと日本では、どのようなパンが好まれるのか、違いはありますか?

日本では、惣菜パンやクリーム、あんこなどの入ったパンなど、「ごはん」「おやつ」として完結するものが好まれると思います。フランスでは、バゲットやパンドカンパーニュのように、料理と合わせたり、ハムなどの具材を自分で用意してサンドイッチにしたりなどと、日本とは勝手が異なるように思います。

目標の実現には「少しずつでも継続は力になる」

――元々パン職人を目指したきっかけを教えてください。

小・中学生の時の近所のパン屋さんを通るたびに漂ってくる良い香りに憧れて。実家では和食中心だったため、パンを食べられるのは日常ではなかったので、憧れの気持ちが大きかったです。

――なぜフランスで挑戦しようと思ったのでしょうか?

2009年にワーキングホリデービザで1年間滞在したフランス暮らしが自分に良く合っていたからです。もっと長期で深くフランスのパンとその文化、フランス語に関わりたかったので、再び2016年のフランス行きを決心しました。

――フランス生活で大変だったのは?

ビザ申請が通らなかった時に、強制的に日本に帰らなくてはいけなかった受け入れ難い悲しい思いをした事と、パリで仕事を見つけたくてもなかなか見つけられず、焦ったり、下ばかり向いていた時期もありました。

2018年に初めてフランスでシェフを任された時は、若い年下のフランス人に文句を言われても言葉の壁があり、シェフとして正しい事を言い返せず、悔しい思いをした場面が何度もありました。

――長年の夢を叶えた成澤さんから、フランスでのお店開業・運営をされる上でのアドバイスがありましたら、教えてください。

「開業」という1つの目標は達成致しましたが、「夢を叶えた」という感覚は未だ無く、今後、地元フランス人のお客さま、さらには日本のお客さまにも認めてもらい、しっかり売り上げを上げる事で、やっと夢が叶うという感覚を得ると考えています。

自分は今もアドバイスを欲している立場で、誰かに具体的なアドバイスをあげられる立場ではないと思います。強いていうのであれば「自分がやりたいと決めた事は、どんな障害があっても決めた道を進み続ける事。少しずつでも継続は力になる」という事でしょうか。

◇ ◇

地方都市・アンジェでは、フランス発祥以外のパンはまだ知られていないものが多いようですが、「だったら逆に自分から提案していこう」と、店内にはフランス伝統のパンとともに、日本ではおなじみのメロンパンも並んでいるそう。地元のお客さんとの交流で、今後どんな魅力的なパンが生み出されるのか、成澤さんの更なる活躍が楽しみです。

■成澤芽衣さんTwitter https://twitter.com/meinarusawa
■「ブーランジュリー・コルネイユ」Instagram https://www.instagram.com/boulangeriecorneille/?igshid=YmMyMTA2M2Y%3D
住所:フランス・アンジェ、コルネイユ通り14番地

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