約60頭が民家にひしめく奄美大島の多頭飼育崩壊 おびえた表情の犬は東京へ 新しい飼い主に恵まれ幸せをつかんだ

松田 義人 松田 義人

 

2021年、奄美大島のある民家でワンコの多頭飼育崩壊が発見されました。その数、約60頭。個人で管理するのは到底無理な頭数です。

地元では数年前からこの民家の多頭飼育崩壊は知られており、地域のボランティアや関係機関がワンコたちの命を救うべく、指導やワンコたちの引き取りなどに取り組んでいました。こういった努力を重ねても解決には至らないばかりか状況が悪化。ついにワンコによる周辺住民への被害が発生し、警察が出動する騒ぎとなりました。

これを契機に、心ある保護犬団体やボランティアが、それぞれの垣根を越えて一致団結し、この多頭飼育崩壊の解決に乗り出しました。奄美大島まで向かった団体の一つが、東京・足立にある保護犬カフェ・PETSでした。

「連れて行くな」と飼い主

多頭飼育崩壊の家に向かい、飼い主に現状を尋ねたところ「飼い方は間違っているかもしれない。でも、かわいがっているし、ご飯もあげている。だから俺の犬。連れて行くな」と言います。

「避妊去勢をしないから、こんなに増えるんです。ワンコたちの管理ができているとは思えません」と重ねて聞くと、飼い主は答えず、怒ります。態度がコロコロ変わるため、これまでに保護に取り組んできた人たちの苦労がうかがえました。

地元行政、他の団体やボランティアの方と団結してワンコたちを保護することになりましたが、飼い主は「どうしても連れて行ってほしくないワンコがいる」と言います。すでに行政指導を受け、所有権放棄をしているにもかかわらず、です。スタッフは憤りを感じながら、多くの有志と一緒にワンコの保護に乗り出しました。

民家にいる約60頭のワンコは3分類

この家にいる約60頭のワンコたちは大きく分けて3つに分類されていました。

民家の作業小屋の中で野犬状態で過ごしているワンコたち。

生まれてからすぐに外に逃げ出し、広大なさとうきび畑を走り回っている、やはり野犬状態のワンコたち。

飼い主お気に入りで、首輪で繋がれているワンコたち。

これら全頭を保護することにしたわけですが、どれだけ劣悪な環境だとしても、ワンコたちにとっては生まれ育ち、なれ親しんだ場所。保護の際は、逃げて隠れて大騒ぎ。縦横無尽に走り回るワンコたちを追いかけ保護することになりました。

ワンコたちにとっては恐怖に感じるのも無理はありません。スタッフは「ごめんね。でも大丈夫。ここにいるよりももっともっと幸せにしてあげるからね」と1頭ずつ保護しました。

 

 

保護したワンコたちの体をよく見ると、ノミ・マダニがぎっしり。スタッフは、フロントラインというノミ・マダニの駆除スプレーをかけると、有志から「待った」がかかりました。「飼い主が、私たちがワンコたちにノミ・マダニの駆除スプレーをかけていることを知ると、後日の話し合いの際に支障が出るかもしれない」と言います。

スタッフは、やるせない気持ちを抑えながら、ワンコたちにまた「ごめんね」と心の中で呟きいったんスプレーをしまうことにしました。

「この世の終わり」感の表情を浮かべた1頭のワンコ

当初、PETSのスタッフは、ここまで劣悪な環境だと認識しておらず、「おじちゃん、ワンコ多すぎるからちょうだいね」くらいに勘違いしていたと言います。そのため「ワンコを保護し終えたら、奄美大島を観光して満喫しよう」とさえ思っていたそうです。

しかし、出発前日に「そんな甘いものではない」とようやく理解し、結果、この劣悪な環境で育ったワンコたちを救い出すことに専念し、複数のワンコを保護し、同団体で引き取ることにしました。

そのうちの1頭がウーピーというオスのワンコでした。

 

保護当初は「この世の終わりが来た」といった感じのおびえる表情のワンコでしたが、東京に連れてきてすぐにスタッフが献身的なケアを施し、たっぷりの愛情を注ぐと、すぐに気持ちを受け取ってくれ、「24時間ボクと一緒にいろ!」というほどの甘えん坊ぶりを発揮してくれました。

保護・ケアを経て、無事新しい里親さんへ譲渡

 

ウーピーは、甘えん坊で寂しがり屋のワンコで、すぐにPETSの人気者になりました。ウーピー自身も笑顔を見せてくれるようになり、後にすぐに新しい里親さんとマッチング。幸せな第2の犬生を過ごすことになりました。

 

譲渡し新しい生活を始めた後、里親さんがPETSのもとへウーピーを連れて遊びに来てくれました。

幸せな生活をつかんだからなのか、保護したスタッフのことを「全く覚えていない」というウーピーに愕然とするスタッフでした。

しかし、そのニコニコした表情を前に、スタッフは「私のことを覚えてくれていなかったことは残念だけど(笑)、でも本当に良かったね! 奄美大島から連れてきた他のワンコたちも、後に続いて幸せな第2の犬生につながるよう、がんばらなくちゃ!」と思いました。

PETS
https://ameblo.jp/pets-adachi203/

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