入学シーズンを控え、筆専門メーカーの「新しい筆をおろしたら、付属のサヤはすぐにお捨てください」という訴えが注目を集めています。
「サヤを捨てて」を呼びかけたのは創業300年の筆専門メーカー「あかしや」(奈良市)。あかしや公式Twitterアカウント(@AkashiyaFude)は春から習字を始める親子向けに「ご使用後、サヤをして保管されますと、筆の穂が腐って使えなくなります…」と驚きの事実を明かしています。筆先を保護するためのサヤかと思ったら、筆を腐らせる悪影響があるとは…。Twitterに投稿したあかしやの担当者に聞きました。
湿った筆先をサヤにはめると腐る
ーー筆のサヤを捨てるようツイートしたきっかけを教えてください。
「直接のきっかけは、返品をチェックする製造担当のそばを、SNS担当が通りかかったことです。
これからお習字を始める方が増える時期でもあり、『授業やお稽古で悲しい思いをする方が少しでも減れば…』という思いで投稿させていただきました」
ーー筆の穂が腐ったという購入者の声は以前から多かったのでしょうか。
「『腐った』というお声よりも、『毛が抜ける』というお声をいただき、見てみると腐っていた…ということが圧倒的に多いです」
「穂が湿った状態でサヤをはめ、カビ・腐りが出るケースは多いです。できる限り説明書きなどに記載し、お取引様のご要望で、サヤにキャップとして使用しないでほしい旨を添付している筆もあります。しかしコスト上の問題もあり、全ての筆に『サヤを使わないでほしい』と記すことも難しいです」
ーー筆のお手入れのコツについて教えてください。
「コツはしっかり乾燥させることです!筆の穂は多くが動物の毛で作られていて栄養があるため、水分と温度があると菌が繁殖してカビ・腐りが発生します。
状態が悪い筆を使って、授業やお稽古の時間が嫌な経験になってしまうのは心が痛みます。しっかりと乾燥させることで、良い状態を保ち、長くお使いいただけます」
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サヤに入れると筆が腐る。衝撃の事実に「知らなかった…」「だから臭かったんや!」と驚きの声が広がっています。
「サヤダメゼッタイ」のハッシュタグを付けてツイートしたあかしやのTwitter担当者は「予想よりも『知らなかった』というお声が多いことに気づき、作り手としても工夫の必要性を感じました。 もっと書を楽しんでいただけるように、サヤの扱いやお手入れ方法などは、定期的に発信していきたいと思っています」と話していました。