破綻懸念の京都市が一転「財政難克服宣言」…でも本当に大丈夫? 22年ぶりに収支均衡、しかしいまだ危機的状況

村山 祥栄 村山 祥栄

2020年12月、門川大作京都市長から「このままいけば財政再生団体に転落するかもしれない」という衝撃的な発言が飛び出し、「なぜ、あの京都が?」と全国ニュースで随分報じられた。あれから二年、2023年2月の記者会見で門川大作京都市長は「財政難脱却の道筋はついた」と財政難克服宣言に胸を張った。

胸を張る理由は、22年ぶりの収支均衡の達成だ。京都市は22年の長きに渡り「収入より支出が多い」という異常な予算編成を続け、その不足分を特別の財源対策と呼ばれるもので補い続けてきた。不足分を補う特別の財源対策とは、借り入れをしたり、借金返済用に積み立ててきた(公債償還基金と呼ばれる)貯金を取り崩すなど言葉の通り特別な対策を講じることで予算不足を回避してきた。その結果、いよいよ特別の財源対策に限界が生じはじめ、冒頭の財政破綻懸念の話になったわけである。

一般的な自治体から見れば収支均衡は普通のことなのだが、これまでの京都市の経緯を知る者からすれば収支均衡が達成されたことは大きな財政再建の一歩として評価できる。

ただ、単年度の収支がとんとんになったという話で、これまでのツケが解消されたわけではない。市債残高は1兆5767億円(臨時財政対策債除く)にのぼり、特別の財源対策として使い込まれた公債償還基金は未だ500億円が不足したままであり、依然として財政破綻度と呼ばれる将来負担比率は政令市ワースト1位、実質公債費率政令市ワースト1位、国が返済の補てんをしてくれない特例的市債残高もぶっちぎりの政令市ワースト1位となっており、財政危機状態を脱却出来たとは言い難い。

また、今年の収支均衡が図れた理由は30億円以上の市民への負担増と税収および国からの交付税増というラッキー要素によるものが大きく、どれが欠けても収支均衡は実現しなかった。こうした要素から考えると、次年度以降も収支均衡を図るのは非常に難しい。少なくともコロナ対策費として大幅に増えた地方交付税は次年度以降減額されることは確定的で、この間、コロナ対策費として支給された交付税を一般的な事業に流用することで予算を組んできた為、次年度の予算編成が苦しくなるのは間違いない。また、物価高騰による支出増、金利上昇に伴う利払いの増、社会福祉費の増、緊急的に支払いを止めていた水道局等へ支払いの再開、市有地売却の終了、税収減のリスクなどかなりの課題が山積する。

加えて、今年は市民負担増によって辛うじて収支均衡が図れたわけだが、市長の「道筋はついた」発言によって市民に安堵感が広がっていることから、今後の負担増についても非常に難しくなった。

これらを加味すると、再び収支不均衡に陥るリスクは否定できず、財務体質も一定の改善はみられるものの、かなり厳しい財政難状態は続く。市長の大丈夫発言とは裏腹に京都市の財政再建の道は長くまだまだ険しい中、引き続き難易度の高い舵取りが求められる。

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