片方が赤色、もう片方が青色になっている「赤青鉛筆」。その1本を15年間、大切に使い続けた女性がいる。ある日、2センチになった鉛筆を使っていると、短い方の赤色の芯がポロッ。確認すると、赤と青の芯が接着していたよう。女性は「中身がこんな構造だったなんて」と驚く。
茨城県の植物園のスタッフとして働く女性。鉛筆を大事に使うようになったのは、幼い頃に谷川俊太郎さんの絵本「いっぽんの鉛筆のむこうに」を読んだのがきっかけだ。アメリカで木を取る人、メキシコから日本に船で荷物を届ける人、日本で鉛筆を作る人…。鉛筆に関わる世界の人たちを描いた作品。「それぞれの人に家庭があり、自分と同じように生きている人が世界中にいることを知って驚いた」と女性。本を読んだ後、お小遣いで色鉛筆セットを買ったこともあり、なおさら大切に使おうと思うようになった。
15年間、愛用する赤青鉛筆は、仕事で使い始めた。企画で子どもたちのワークシートの丸付けで使い、大きく花丸を付ける時には、子どもたちが手元をのぞき込んできた。小さくなった鉛筆を見せると、驚いて目を丸くしたり喜んだり。その姿が愛らしく好きだった。短くなると、金属製の鉛筆ホルダーを利用。さらに短くなっても、摘まむように持って使った。昨年4月に別の植物園に転職したが、今も書類のチェックなどに使っている。
中の構造を見たのは今年1月上旬。2センチほどになった赤青鉛筆を使っていると、赤色の芯だけが折れて中から出てきた。「赤と青の芯が混じっている部分があったらかっこいいなと思っていたけど…。赤と青の芯の境目が接着剤でくっ付いているみたい。接着ではなくて、1本作りの可能性もありますね」と想像を巡らせる。ツイッターに投稿すると、瞬く間に拡散され、「SDGsのプロだ」「感動しかない」「最後まで中身たっぷりだったのか…トッポかよ」などと返信であふれた。
老舗メーカー「トンボ鉛筆」に聞いた作り方
では、赤青鉛筆はどうやって作っているのだろう。老舗メーカー「トンボ鉛筆」の広報担当は「赤青鉛筆は2枚の板からできていて、芯を挟むサンドイッチの構造になっています」と話す。作り方は、板に溝を掘り、溝に接着剤を塗布。その上に赤色と青色の芯を隣合わせに置いて、上から別の板を乗せ、圧力をかけて乾燥させる。1枚の板から9本が作れるといい、最後に板を裁断して、鉛筆の形に丸く削れば完成する。
芯の境目が接着されていたという指摘に、担当者は「接着剤が芯と芯の間に入り込んでそう見えたのかもしれない」と説明。「こんなに大切に使ってくださって、感謝いたします」とかみしめた。
ちなみに、15年間赤青鉛筆を使い続けた女性は、残った青色部分をこれからも使う気満々!「カッターで削る時に固定しにくくなったのが悩みです」